10兆円ファンド

10兆円ファンド会長

ソフトバンクの孫正義氏が昨年5月20日に10兆円ファンドの創設を宣言してから1年になる。

私が10兆円ファンドに関心を持ったのは民間でこのような大きなファンドなりプロジエクトが出てくるのを期待していたからである。

世界に先駆けて長寿社会を迎えた我が国では、長寿社会を達成した高齢者の人たちがこれまで働いて蓄積してきた資産を活かして長寿社会を維持する原資として還元してほしいと考えているからである。

これまで、ほっとタイムス

2012年11月号「十分な利息を払える産業、政策を」
2013年1月号「平成の渋沢栄一出でよ」
2015年7月号「預金利息「5%」の政策を」
2016年11月号「金融機関はどう変わるか」
2017年8月号「カネ余り?」
2017年10月号「産業創生銀行」

などで繰り返し取り上げてきたテーマである。

アベノミクスが始まって第三の矢「成長戦略」が打ち出された時、今までの延長線上にあるような成長戦略ではダメで、明治維新の時のようなダイナミックな「欧米に追いつけ、追い越せ」式の大胆で革新的な成長戦略でなければならないと感じたのである。

そこで①「十分な利息を払える産業政策を」のなかで“国家プロジェクトとしての産業政策”を図って欲しいと訴えた。ついで②「平成の渋沢栄一出でよ」の中では「いまこそ、世界のセンターとなる新産業の創出を」などアベノミクスが始まってからアベノミクスにおける新産業創設はかくあるべしと書いてきたが、次々と打ち出される成長戦略は根本的な改革とは程遠い感じがしていた。

松下幸之助氏の無税国家論

松下幸之助氏は以前から国家の在り方や国家の無駄を論じ、その一つとして「無税国家論」を説いておられた。

国家財政に余剰を生み出し、余剰の中から資本を蓄積し「資金のダム」を作り、そこから生まれる余剰を減税財源にすればやがて無税国家を実現できる、という趣旨であったかと思う。「金持ち父さん貧乏父さん」の国家版である。

夢物語ではない。ドバイは石油資源の枯渇を見越して、石油資源で得た資金を蓄積し、壮大な開発をして近代的な無税国家に変貌しつつある。

シンガポールは小さな島国で資源もなくマレーシアから追い出された国だが、先見的な指導者に恵まれ、積極的に産業や資金を誘致し、極めて低税率な近代国家として出現した。

豊かな国日本

明治維新では松下村塾や薩摩や長州の先見的な人々の活躍によって欧米列強に並ぶ先進的な国に変わった。

不幸な戦争があったが国民全員が産業振興の意気に燃え大創業時代を経て、日本には松下幸之助氏が云うように1800兆円にもなろうとする個人金融資産がある。企業は無借金企業が増え対外純資産も沢山積み上がっている。浜矩子氏によれば対外債権で見れば1ドル=50円でもおかしくはないという。

しかし、日本の政策は円安を目指しており、日本を破滅の淵へ導いているのではないか、と著者は述べているのである。

経済成長率より資本成長率

トマ・ピケティは「新資本論」「資本成長率>経済成長率」を証明し資本主義は益々格差を拡大していくとして格差拡大の主要因を資本の成長率にあるとして、資本成長率に注目した。

松下幸之助氏の無税国家論も資本を積み上げ「資本のダム」を活かして、ダムからあふれ出てくる豊富な水(余剰)を活かして国民生活を潤すというものである。

今の日本は個人金融資産も企業金融資産も対外純資産もかってないほど積み上がっているのである。この資本を松下幸助氏のいう「資本のダム」として活かすことはできないのであろうか。

浜矩子氏やピケティ氏ではないが、この積み上がっている資産を活かしきれていないと感じている。

革新的な国家戦略を

孫正義氏は「坂本竜馬、維新の志士が江戸幕府より長続きする新政府を」と幕末を駆け抜けたのに感銘を受け、「徳川幕府に負けない300年以上続く企業グループを作るため」投資を通じて同志的結合をつくる「群戦略」なる思考枠組みを提唱している。

孫氏のような知恵ある民間人が沢山輩出し、国家300年の大計のもと「長寿社会は資金の余剰で」過ごせるような豊かな日本にしてほしいと願うものである。

 

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三

 


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