カネ余り?

お金は働かないから太る?

会長◆6月11日

預金ついに1,000兆円
金利無くても残高最高
回らぬ経済象徴

◆6月13日

「実質無借金」初の2,000社超
好業績で財務体質改善

◆6月27日

預金、東京一極集中
1年で12%増の254兆円
遺産相続契機に流入

◆6月28日

家計資産 1,809兆円
3月末時点、株価回復が影響

つい最近(2017年6月)の新聞で目についた「カネ余り」と思われる記事の中からいくつかをピックアップしてみた。

先月号にも書いたが、長寿社会ではお金に働いて貰わなければ成り立たない社会である。

預金金利が付かなくなって久しい。お金が働かないこととはお金が利子や収益を生み出さないからである。銀行制度ができる以前の他人のお金を働かす場がない時代には〝カメ〟や〝蔵〟にしまいこんで貯めた。現代では先祖返りして〝タンス預金〟にシフトしているのもうなずけるのである。

お金はなぜ働かない

イギリスでは産業革命により中産階級が勃興し金融資産が増加し、植民地へ産業がシフトしていくとシティが金融センターとして産業革命で生まれた資金の運用を取り仕切った。

アメリカでは第二次大戦中は世界の武器工場として栄え、戦後は自動車産業を中心に多数の賃金労働者を産み中産階級が勃興した。

その後、ドイツや日本との産業競争に敗れてからは蓄積した産業資金のセンターとしてのウォール街が誕生し、お金を働かす仕組みを作り上げた。

翻って日本は世界第二位の産業大国として成長し一億総中流社会を達成した。しかしながらバブル崩壊後適切な対策を打てないままデフレに埋没し、中流階層はいつの間にか貧困層に転落してしまい、東京をお金を働かす世界の金融センターに、という声もいつの間にか消え、カネ余り大国になってしまったのである。

お金を働かすには

銀行は産業を創出し資金を供給するのがその本質的な業務と考えている。渋沢栄一氏はかってヨーロッパ視察団の一員としてヨーロッパへ行く途中スエズ運河を通ったときにスエズ運河という壮大な事業が民間資金によって行われていること、その背後に銀行制度という存在を知った。帰国後銀行制度を作りそれまでカメや蔵の中にしまわれていたお金を銀行へ預けさせ、銀行制度を活かして多くの株式会社を創立して産業を興した。

グローバル社会が実現したいま、産業創出は日本国内に限った事ではなく、イギリスがスエズ運河を開通させたように、海外に広く産業創出の機会を求めればよいのである。

アメリカでは公共投資でも国のプロジェクトにせず民間にやらせるのが当たり前になっている。一例として、アメリカ国内に新幹線網を展開することなどはどうであろうか。JR東海のように成功すること間違いないであろう。

余ったカネはどうなる?

最近出版された藤井聡氏の「プライマリー・バランス亡国論」によると(155P)「国債暴落Xデーが訪れる可能性もほとんど考えられない」「その理由もやはり、最後の貸し手である日銀が存在しているからだ」「国債の投げ売り」や「金利の高騰」の兆候が見られた瞬間に、経済の混乱を回避するため、日銀は国債の購入を始めるだろうことは間違いない」「『国債投げ売り』なるものは、具体的な諸条件を考えれば、やはり、ありえないとしか言いようがないのである」と書いている。

誰しもがそうであればよいと思うがプライマリー・バランスを放棄すれば国債が累増していくことは理の当然であり、金利のつかない国債を誰が買うのであろうか。

もう一つ氏が考慮していないのは国債の先物市場であり、先物市場では外国人が主要なプレイヤーであることである。日本国債の脆弱性は海外のヘッジファンド筋が何年も前から警告している通りである。

カネ余りで貯まった預貯金や金融資産がある日突然「預金封鎖」により国債と帳消しにされる日がいつ来てもおかしくはないのである。

日本国民は「プライマリー・バランス亡国論」のような甘くておいしそうなお話しを信じ「ハーメルンの笛吹き男」に出てくる子供たちのように踊りを踊らされながらいずこともなく闇に連れ去られることのないように願うものである。

 

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三

 


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