トマ・ピケティ雑感

トマ・ピケティ氏の格差論

トマ・ピケティ氏は膨大な資料を解析して「r>g」:「資本収益率が経済成長率より大きい」という極めてシンプルな公式を打ち立て、資本主義経済に内在する格差の拡大を証明し、昨年から世界的な話題・ブームを引き起こしている。

私がこのピケティ氏の「r>g」と格差の拡大の話に関連して真っ先に連想したのは「金持ち父さん、貧乏父さん」(ロバート・キヨサキ著)の話と松下幸之助氏の「ダム経営論」である。

トマ・ピケティ氏が「r>g」を改めて言い出すまでもなく多くの人たちは豊かになりたいと願い、資産の形成こそが富、豊かさの源泉として理解し、実行していた。

「金持ち父さん、貧乏父さん」

ロバート・キヨサキ氏は「金持ち父さんと貧乏父さん」の中で、金持ち父さんと貧乏父さんを分けるもっとも顕著な特徴を、金持ち父さんは生活(お金)のために働かなくてよいように財産を蓄積し、生活(消費)のためのお金は、蓄積した財産の収益で賄い、〝自分のしたいことに自分の時間と能力を使える人かどうか〟だという、自分の能力、時間を生活のために使っている人を貧乏父さんといっているのである。

松下幸之助氏は、事業で収益を上げ、ダムに豊富な水を貯めるように企業内に内部留保を蓄積し、景気や事故・事件に経営の意思決定が左右されないように長期的な視点に立った経営を目指した。

資本・富の由来

トマ・ピケティ氏が「r>g」を改めて言い出すまでもなく多くの先人たちは資産所得の重要性を理解していて資産の形成こそが目に見える幸福の源泉、力の源泉であることを知っていた。

ベルリンの壁が崩壊して以来、共産主義社会から資本主義社会へ移行してきた。この過程で世界中の開発途上国が資本主義経済へ移行し、それに伴い多くの資本家が輩出してきたが、多くは、中国に代表されるように権力の中枢にいた人々が国家財産を簒奪して富の形成をしてきたのである。

しかし、アメリカを中心にした自由主義社会では富の形成は親からの遺産によらない個人の能力や努力によって創業者利益や高額の事業報酬によって形成してきた人々が出てきた。マイクロソフトのビル・ゲイツを始め、アマゾン、フェイスブックの創業者たち、日本でも柳井正氏や、孫正義氏などはその典型である。

富は誰にも不公平

社会主義国、開発途上国ではこれらの権力に近いほんの一握りの人たちがそれを手にした。しかし、アメリカンドリームに象徴されるアメリカ型の成功者も多く出てきているのである。

反面、多くの人々は生計を資産に依存できるに必要な額に達しないまま生涯を終わることになったり、場合によっては何世代もつなぎながら這い上がってくる人もいる。

しかしまた、せっかく富があっても、富を蓄積する苦労を知らない人々はその富を活かす重要性に気付かず、自分一人の欲望やあるいは無能力によって使い果たしてしまう人も出てくる。

「税は誰にも不公平」と第169170号に書いたが、富についても同じだ。野球選手やスポーツのスター選手にとっては高額の報酬が当たり前だと思うであろうし、財産を処分しながら豊かに生活している人々に対しては、汗水流して生活している人は羨ましがったり、ケシカランと思うかもしれない。

格差社会への入口

「r>g」は資本主義に内在されたものである。だからこそ「金持ち父さん」や「ダム経営論」が出てくるのである。

いま、日本の格差拡大は豊かな上層部へ富が集中しているのではなく、中間層から貧困層へ、さらに貧困層が拡大していると指摘されている。

ロバート・キヨサキ氏はまた、自分の欲しいものや旅行や何か特別なことは資産収益に余裕ができたときに、「自分へのご褒美」として考えましょう、といっている。しかし、いまはローン社会全盛で氏が豊かになるために求めていることと正反対の社会になっていて、ローン社会は格差社会を下に押し下げる入り口の役割を果たしているように思えるのである。

豊かになれる社会は個人の能力を尊重する自由主義に根差した創業が自由にできる社会、創業型社会が望ましいと考える。

 

税理士法人LRパートナーズ  代表社員 小川 湧三

 


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