第69回 業務に生成AIを活用する方法①

AI

情報セキュリティ連載
試される人工知能「チャットGPT」の実力

前々回まで、生成AIに対する汎用的なプロンプト(命令文)である深津式プロンプトに触れました。今回は生成AIを活用して企業情報をどう活かすかについてお話させていただきます。

近年、Google chromeやEdgeなどWebブラウザの機能が拡張していることや、スマートフォン自体の処理能力の向上等々で企業でグループウェアの採用事例が増えており、2018年の調査ではありますが企業の導入率は8割を超える状況です。

当社でもNIコラボ360というグループウェアを使用し、スケジュール管理や日報をはじめ様々な業務に活用しています。

1 グループウェアも業務に必要なアプリが作れるようになっている

グループウェアには日々、従業員の業務内容が業務日報という形で集積されています。グループウェアにはBIツールなどの分析ツールを搭載しているものも多くありますが、使いやすさは一長一短なものも少なくはありません。というのも、グループウェアは汎用性を高めるため、デフォルトでは個々の企業にあった形の構成にはなっていません。

このことから、グループウェア内にプログラミングなしで分析する独自のアプリを作成することまでできるようになっています。

2 グループウェア内に集積された情報を活用しているか

では、グループウェアのツールを利用して情報から分析、活用ができているか、現状は活用しきれていないというのも事実のようです。

上記で、業務アプリを作れると申し上げましたが、アプリを作る上で何をどう作ればいいかがわからないという最大の問題が発生します。

また、通常業務をこなしながらアプリを作る時間を捻出するのは厳しいというのも現状のようです。

3 分析ツールも兼ね備える生成AI

従来のシステムだとどうしても分析ツールなどのアプリを使用しないと分析できません。

例として、業務から挙がってくるデータにばらつきが多いです。そのためデータのばらつきを均一化させたりする必要がでてきます。

従来のシステムだとデータを使えるまでにまずデータラングリングという作業をし、そこから分母数に差があるデータを均一化するなどの統計学の処理をさせるのに専用ツールをつかわなければなりません。

これに対し生成AIは専用ツールを使わなくともデータラングリングから、統計的な処理まで命令文だけで作業をしてくれます。

具体例は文字数の関係から掲載はできませんが、ChatGPTやGemini(旧Bard)に下記の質問をなげかけてみてください。

質問:

統計学の標準偏差でいい問題と回答例を教えて。
利用シーンとして、営業の新人研修で分析の初歩を学ばせるときに使いたい。

生成AIの回答はおそらく、1年間の売上の表を出し、ここから平均値と標準偏差値をだしてその誤差を説明する内容だと思われます。

質問例では、データも生成AI側に依頼をしましたが、様々な業務シーンでは自ずと数値は出できます。今回は標準偏差で数値を出してと指示していますが、生成AIへ数値と現状をつたえどうしたいかを伝えれば、統計学を知らなくても、またBIツールの細かい設定を知らなくとも欲しいデータは出てきます。

どうでしょうか。生成AIはプログラムコードではなく、通常使う言語で指示するだけで様々な情報を分析、結果を出してくれます。

4 生成AIの懸念点

使用するのにハードルが低い生成AIですが、良いことばかりではありません。

大きな懸念点として主に2点挙げられます。

❶ 学習の流出

学習の流出とは、生成AIへ質問した内容が生成AIの学習に使用され、他の質問者の解答に利用されてしまう問題です。状況によっては情報流出につながる恐れがあります。

❷ ハルシネーション

和訳すると幻覚、妄想を意味するものですが、生成AIがウソをつく現象を幻覚や妄想してるかのように表現するところからこの表現がされています。

上記2点に関しては対策が取れるようになっています。まず、の学習の流出についての対策ですがOpenAI社やGoogle社の生成AIは企業版を有償契約することで使用した情報を学習に使われないようにする仕様になっています。

次に、のハルシネーションの問題ですが検索拡張生成(RAG)という機能が注目を集めています。RAGとは簡単に言えば、生成AIが質問や指示に対して自らが出した答えと、WikipediaなどのWebページから検索した内容に整合性があるかを生成AI自身が検証してから答えを出す機能です。

そもそも、生成AIは質問された内容の意味合いを理解していません。それに合った回答方法を出すように組まれたプログラムのためハルシネーションがおきていました。

それを防ぐために、ネット上の情報と整合性があるかの検証をできるようにしてハルシネーションを減少させています。

コンサルティング企業のデトロイトトーマツでも生成AIにこのRAG機能を追加させコンサルティング業務の精度を上げています。

生成AIは専用ツールやプログラミング言語がなくとも、分析等に利用でき、さらに普段使っている言葉でカスタマイズすることができるものです。従来だと様々な技術取得に時間がかかり断念していたものも発想次第で可能にしてくれます。

生成AIの懸念点2点はすでに解消もしくは減少させられる状況にあるので活用機会は増えるでしょう。

次回からGoogle社の企業版生成AIであるVertexAIで分析のテスト方法を紹介していきたいと思います。

《参考文献》

『生成AIの本格活用(4)顧客対応を改善・高度化 デロイトトーマツグループ パートナー 森正弥氏(戦略フォーサイト)』 2024年3月8日付 日経産業新聞
『プログラミング知識ゼロでもわかる プロンプトエンジニアリング入門』 掌田津耶乃 著

 


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