「ふるさと納税で循環型社会へ」

秋の訪れ

いま、各地から鮭の遡上の話題が伝えられてくる。鮭は旅をする体力が付くと生まれた所からはるばる遠く見知らぬ大海を目指して川を下り大きくなって生まれ故郷へ帰ってくる。この鮭の話題を聞きながら、今盛んに行われている増税議論を『ふるさと』『長寿社会』 『グローバル社会』という三題噺と『ふるさと納税』 と結びつけながら考えている。

東日本大震災で「ふるさと」が破壊され、放射能に汚染されてふるさとを離れて移住した人たちや、避難所や仮設住宅暮らしを強いられている人たちを思うと胸が痛くなる。

大震災によって崩壊した「ふるさと」をどう再生するか、「長寿社会」の煽りを受けて消滅していく農漁山村、西欧諸国の停滞と発展途上国のパワーバランスに翻弄される「グローバル社会」の中の日本、どこかが少しずれていておかしいと思うのは私だけではあるま い。

税は社会を変える

「長寿社会」は人間の究極の願いの実現に他ならない。ところがどこでボタンが掛け違ったか、姥捨て山を連想させる悲惨なイメージを抱かせる。年金問題然り、孤独死然り、幽霊百歳然りである。地方には産業がない、税収がない、だから何もできないという。

しかし、「長寿社会」は人類の願いであり、むかし夢見た桃源郷への入口である。桃源郷は春には梅や桃や果物の花が咲き乱れ、秋には豊かな実りを収穫できる社会である。このような理想の長寿社会を「ふるさと」に作るにはそれに見合ったお金が回るような仕組みを作ることである。

「税は社会を変える」というが、首都圏から農漁山村へお金を廻す仕組みとして「ふるさと納税」制度を提唱したい。ふるさと納税制度については、本誌120号、129号で書いたが、その骨子は、①国籍主義をとること、②個人所得税(地方税を含む)を超超過累進税率制をとること、③法人税率は 10 ~ 20 %のフラットな税率をとるこ と、④所得税の一部を自分の意思で終の棲家としたい「ふるさと」へ納税できることである。

ふるさと納税制度

それぞれについて簡単に説明すると、

①については日本の税制は居住地主義で日本に居住している人に課税する仕組みである。これをアメリカが実施しているように、居住地を問わず日本国籍や居住権を持ち世界で活躍している人にも納税してもらうようにする。

②現在の超過累進税率の上限は1700万円の 50 % (住民税を含む)であるが、上限を1億円、10 億 円、50 億円と、税率(終戦直後は最高 92 %)も思い切って引き上げる。時あたかもアメリカではバフェット氏が高額所得者の税率引き上げを納税者自身から提案して話題を呼んでいる。

③法人税率は所得税率とは逆にグローバル社会で競争できるように税率を引き下げるべきである。法人は大勢の雇用を作り出し、それらの人々からの所得税や社会保障負担をも生み出しているのである。単純に法人税率だけをみるのではなく、法人・企業で働く人の所得税等をも合わせてみれば法人の税率はフラットで、低税率であることが望ましい。

④その上で、海外で働く人々は日本へ「税」という形で還元し、ふるさとを離れて活躍している人々は納税という形でふるさ とへ還元する。

循環型社会へ

このようにすれば、高齢化率が高いといわれるところでも産業がない、税源がない、と嘆かずに安心して暮らせる社会を作れるのではなかろうか。ベトナムは難民の人たちが海外から送金して国内に残っている人たちを助け、国を守った。

ふるさとを離れて活躍している人たちがやがて、鮭がふるさとの川へ戻るように、美しい四季に彩られた山河や自然に恵まれて、ゆったりと満ち足りた桃源郷へ安心して戻れるような長寿社会を築く。このような循環型の社会にできるような税の仕組みとしてふるさと納税制度を提唱したい。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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