会社への高額貸付に関するグレーゾーン
近年の税務実務において、「無利息だから課税上問題はない」という従来の考え方は、徐々に通用しなくなりつつあります。
背景には、同族会社と個人との取引に対する課税の在り方を厳格に判断する裁決や裁判例の蓄積があります。
たとえば、令和7年3月7日の裁決では、「同族会社への貸付が無利息で行われるのは一般的である」との主張があったものの、それだけで課税関係が否定されるわけではないことが示されました。
つまり、従来の「慣行」や「社内での合理性」だけでは、税務上の評価を免れることはできない傾向が強まっています。
この流れは、平和事件(最高裁平成16年7月20日判決)に端を発します。平和事件では、個人が同族会社に対して巨額の資金を無利息・無期限・無担保で貸し付けた行為について、税務当局が本来得られるべき利息相当額に課税しました。裁判所は、無利息貸付は原則として経済合理性を欠くとし、その結果、所得税負担が不当に軽減される場合には、あえて利息を受け取らないことが税負担回避に当たると指摘しています。
このことから、実際に利息を受け取っていなくても、「通常であれば得られたはずの利益」がある場合には課税対象となり得ることが明確になりました。
ただし、これらの判断は無利息取引を一律に否定するものではありません。倒産回避や経営上の必要性など特段の事情があれば、合理性が認められる余地はあります。
しかし、その立証責任は納税者側にあり、単なる同族関係や従来の慣行だけでは十分とはいえません。近時の裁決は、従来以上に実質的・客観的な経済合理性の有無を重視する姿勢を示しています。
今後の裁判の焦点は、無利息取引の合理性をどの程度厳格に判断するかにあります。
特に、企業再建やグループ内支援など、実務上不可欠な取引との調整が重要な論点となるでしょう。無利息であること自体を直ちに否定するのではなく、その背景事情をどこまで考慮するかが注目されます。
今後の裁判例の蓄積を注視することで、租税法における実質課税原則の具体的な輪郭がより明確になることが期待されます。

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