消費税の目的税化に反対する

税制改正

毎年、年末年始は税理士にとって税制改正に関心が集まる季節である。今年も例外ではないが、民主党になって最初の本格予算の骨格となる税制改正として、どんな税制を求めているのか関心があった。

しかし税制改正手続きが自民党時代と変わって、決定過程や改正内容の項目がわかっても 詳細がわかりづらいことである。

発表された税制改正大綱によれば、法人税中立(税率減税・その他増税)所得税増税、相続税増税であって、マニフェストを実現する財源探しのためにチマチマした項目が議論や内容が未消化のまま改正に持ち込まれたよ うな感がある。

また、14 日菅第二次改造政権が発足し、その目玉が与謝野経済財政相の就任で、消費税増税によって社会保障財源を目指すことが明らかになった。しかも新聞で報じる所では消費税の増税分を社会保障費に充当する目的税としたいと言っていることである。

税金の使い道

昨年 12月号にアメリカの税制改革運動「ティーパーティ」について書いたが、私たちも国家の役割と税金の使い方について考えるべきときがきたのではないだろうか。国家の役割は国民の生命と安全を護ることである。

も う少し具体的に言えば、国防・外交・治安・教育・国土保全・インフラ整備などである。昨年は民主党政権が国際パワーバランスに対する無理解や極東を巡る国際情勢の判断ミスから沖縄・普天間問題の対処を誤り、尖閣・北方領土問題を引き起こした。

結果は国際関係における厳然たるパワー・ゲームの存在であり、野望を顕在化させてしまった。加えて中国の軍事パワー ( ステルス機の試験飛行、空母保有、原子力潜水艦の強化 )やレアアース問題に象徴される資源問題が明らかになってきている。

国防、外交、教育の疲弊は目を覆うばかりに見えるのは私だけではないと 思う。国家の根幹となるべきこれらの再建のために確たる信念で安定した財源である消費税を充当して欲しいと考えている。

社会保障は「自助・共助・公助」

憲法 25 条で定める「国の生存権保障義務」を知らないわけではないが、社会福祉や社会福祉制度の整備は国家の役割ではあっても、基本的には生きていくための生存コス トは働けなくなる老後の分も含めて自分の現役時代でしかまかなえないのである。

「自助・共助・公助」が基本であるべきであって、まず自らの生存コストは自らで準備する、次は同世代間で助け合う、それでもなお必要なときにはじめて公で助けることであって、国民の自助を援ける仕組みづく りが国の基本的な役割である。

家計にたとえれば、家計の収入はまず衣食住の基礎的な部分に充てられ、福利的なことなどは後回しにされる。国家においても社会福祉制度に充てられる財源は二次的な優先順位にならざるを得ないのである。

この社会福祉制度に関する税源 を、もっとも安定的な消費税の財源に求めて使途を限定する目的税とすることは、国家の基幹となる役割の財源を景気に左右される不安定な税源に委ねることになり、国家の役割と税源配分の優先順位を誤ったものと言わざるを得ない。

安定財源は国家の基本政策の基礎財源に、社会保障制度は余剰で支えるという意味で消費税以外の法人税、所得税などの税源をベースに他の内政経費の中で配分すべきものと考える

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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