中小企業の試練:地域金融機関の再編はじまる

平成景気戦後最長へ

No92_1327379210月の月例経済報告で現在の景気が57ヶ月続き戦後最長の「いざなぎ景気」と回復期間で並び来月には戦後最長の更新が確実になった。エコノミストに依れば意見は分かれるが最短で2007年1月、最長で2009年まで景気は持続するのではないかとのことである。

しかし、景気回復の実感が感じられないのは誰もが同じ感を抱いているのではなかろうか。別表のようにLR小川会計グループのお客さまの今年1月から8月まで各月の前年同期と比べた売上高は6月を除き減少しているのである。売上高の減少企業が増えた企業よりも多いのが現状である。

 

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図1は9月号に掲載したものであるが、平成景気の実態を良く表していると思うので再掲した。いざなぎ景気の成長率11.5%に比べて約五分の一の2.4%である。名目国内総生産はいざなぎ景気122.8%に対して平成景気は0.9%、賃金は82.0%増に比べて1.6%減少である。

首都圏を中心にした都市圏と地方の二極分化、大企業と中小企業の二極分化が進んでいる。

中小企業の中でも1990年代の半ば以後出てきた企業はバブル崩壊による影響を受けなかった企業や、逆にデフレを梃子に成長したユニクロや100円ショップ、サービス産業があるが全体としては少数派で経済をリードする主役にまではなっていない。企業の新旧格差も広がっているように見受けられる。

地域金融機関の再編加速

月例経済報告の発表された翌日、10月14日の新聞報道によると福岡銀行が九州親和ホールディングスを傘下におさめることが報じられていた。いよいよ中小企業が頼りにしている地域金融機関の不良債権処理が本格的になってきた。あおぞら銀行(旧日本債券信用銀行)が平成10年に破綻してから8年、来月再上場されることになった。

6兆円に及ぶ公的資金をつぎ込んで都銀の不良債権処理を目的とした金融機関の再編が行われたが、そのユニバーサル銀行が注入された公的資金の返済が完了するまでに回復したのを待っていたかのように地方金融機関の再編が始まったのである。

中小企業の試練の始まり

地方金融機関の再編は先駆けとなった足利銀行の破綻のように地元経済への局所的な影響が集中的に起こりやすい。中小企業に対するバブル後遺症の最後の清算が始まるのである。金融庁は来年3月までに地方金融機関に不慮債権処理の方針の提出を求めているという。

今年に入ってリージョナルバンクとしての地方銀行レベルの再編が既に4件もあり、来年3月の年度末に向けてさらに再編が進む。第二地銀、信用金庫、信用組合についても同様である。中小企業は直接金融による資金通調達ができず、資金調達は地域金融機関からの借り入れに頼らざるを得ない、中小企業の命綱なのである。

地域金融機関の再編は、中小企業に対して最後の試練の場となるのである。栃木県の足利銀行が破綻し日光・鬼怒川を中心とする地域産業が大きな打撃を受けたことはまだ記憶に新しい。

中小企業はどう防衛するか

金融庁は地域金融機関のこれからのあり方としてリレーションバンキングのモデルを提示している。

しかし、現実には今までの濃密な関係にあった中小企業との関係をバブルによる不良債権処理とともに一旦清算した後に新たな中小企業との関係作りの中でリレーションバンキングとして定着するのではなかろうか。

これからは地域金融機関の融資審査も財務諸表を中心としたスコアリング方式になるものと予測される。背景には「中小企業の会計に関する指針」が公表され、中小企業の財務諸表が統一されたことがある。

したがって、中小企業もこれからは財務内容の充実が第一となり、事業計画も含めて地域金融機関への説明責任が重要な要素となるのである。

結局、中小企業も企業経営の原点に帰り事業経営者として「税務のための経理」から、「経営のための会計」という本来の姿に戻らなければならない。

(小川 湧三)

 


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