路線価にみる景気の二極分化

路線価が発表された

No90_16528778月1日平成18年分の路線価が発表され標準宅地の平均路線価が14年ぶりに上昇に転じた。

しかし、詳細に見ると都道府県別では47都道府県のうち上昇したのは昨年の東京都の1都に比べて5都道府県で上昇に転じた。首都圏では東京都、千葉県、関西圏では京都府、大阪府、中部圏では愛知県の5都道府県だけで他の42の道府県ではまだ下落傾向が止まっていない。

県庁所在地で見ると昨年の6都市に比べて15都市と大幅に増加してきている。神奈川県では14年連続で路線価が減少したが県内18税務署の最高路線価は昨年の1税務署から今年は6税務署に増加した。

もう一つ、路線価の発表に続いて8月4日平成18年3月末の住民基本台帳の人口が発表されて総人口初めて減少したことを発表した。総人口の減少は昨年中間集計で予想はされていたが政府が年金設計の基礎としていた予想時期とか早く減少がはじまったことになる。

人口が増加したのは関東圏では東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、関西圏では大阪府、滋賀県、中部圏では愛知県、九州では福岡県、沖縄県の9県である。

地価回復の原動力となったREIT

No90_1654613地価が上昇に転じたことは明るい話題であるが、冒頭にのべた通り、中国の「先冨論」ではないが先に首都圏の中心であると東京で始まりようやく地方都市への波及が緒についたところである。

地価上昇の主因は既に種々報じられているとおり、地価は首都圏における商業地の再開発や交通基盤の整備が進んだこと、また、これらの要因を加速させたのがアメリカでは1900年代の初からあるREIT(不動産投資信託)という不動産の証券化の投資手法(図1)が認められ、都心から始まった大規模再開発による地価上昇の強力な“助っ人”となった。

地価上昇から景気をどう見る?

2001年1月を底とする景気上昇を戦後2番目に長い「いざなぎ景気」を超えるのではと期待されているが、その実態を見ると図表2のとおりである。確かに期間の長さでは新記録でも手にするお金での景気感は今ひとつである。

総人口減少の中、人口増加都市と地価上昇地域、人口減少都市と地価減少地域が重なっており、豊かなところ、豊かな者はより豊かに、弱者はより弱くという二極分化が進んでいるのが透けて見える。

地方ではまだ人口の減少と地価の下落でデフレ状態が進行している地域が多数存在していることを示している。

首都圏では明るさが見えて来ているが、しかし、リストラによる企業業績の回復も一段落し、団塊世代の大量退職による新卒求人の人件費高、原油高、ゼロ金利解除による金利引き上げ、平成16年に改正された老年者控除や保険料などの実質増税が今年から庶民の懐を直撃している。

一方、地方の地価を引き上げてきたREITによる地価上昇の波及も既にREITが有するリスクプレミアムを相殺しており、バブル的様相を呈し、地価ミニバブル論も囁かれているところである。

このように見ていくと、相次ぐ中小企業増税に直撃されている中小企業レベルではまだまだ景気の回復を手放しで喜べない状況と考えるものである。

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 (小川 湧三)

 


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