静かな退場と新しい時代に向けて

最近、景気・経済の状況について長く続いてきたデフレの脱却が視野にはいった「踊り場」と言われる状態だとの報道が多くなされるようになって来た。

確かに1997年の銀行倒産や2001年の中国シフトによる空洞化現象に見るような嵐は凪いでいるが、デフレは一時のような激しい状況ではないが、まだまだ水面下にあることは多くの人が認めるところである。

このような中で、ここ三ヶ月の間に二件のお客さまが静かに廃業した。別表はその軌跡の一つである。戦後の経済成長とバブルの崩壊をそのまま写し、緩やかに低下が始まり1997年前後を機に急速に下降してきたことである。

シャッター通り・車社会の影に

地域振興策がいわれて久しいが商店街は郊外にできた大型店の集客力に対抗できずに転廃業が相次ぎ「シャッター通り」と言われて久しい。

商店街衰退の直接の原因は車社会の到来、許認可事業の規制緩和などである。所得水準の向上とともに変わってきた消費者の嗜好・行動の変化なども挙げられる。生業・家業的商店などの小型店舗についても業態が変わりファミリー・レストラン、コンビニエンス・ストアなど資本力を背景に規格化され、マニュアル化された事業に変身してしまった。

このような時代の流れに多くの中小商店は資本・年齢・体力的に適応できないために転廃業へ追い込まれてきた。

生業、家業、事業

お客さまの事業の形態を分けると生業、家業、企業に分けることができる。なぜ、このような分け方をするのかといえば、後継者をどう育てるのかと言うところに行き着く。

生業はとりあえず家族を養うための職業といえよう。後継者はとりあえずさておき自分がどう生きるかが中心である。家業は家族労働を中心に老舗に代表されるように何代も続けていく事業である。後継者は家族の生活の中に既に組み込まれて育てられることが多い。事業は最終的には資本と経営の分離が行われ、後継者は経営能力を基に適任者が選ばれる。

私たちのお客さんの多くは生業的、家業的事業である。しかし、多くのお客さまは自分の事業を継いでくれる後継者を心密かに望んでいるのである。生業から家業へ、家業から事業へ発展していくことを望んでいるのである。

新創業時代の到来

企業は時代の変化に対応できなければ続けることはできない。これからの社会はどう変化していくのか、今までは戦争の終結による海外からの引き上げによる人口の急増と団塊の世代の発生と工業化の進展を背景とした所得倍増時代、車社会の到来であった。

いま現れている変化の大きな流れは「少子高齢化社会」の到来である。工業化・車社会に対応する技術的背景はIT・ネット社会ともいうべき兆しである。これからの後継者は今までの事業をそのまま受け継ぐのではなくどうIT・ネット技術を取り込みどのように業態を変化させることができるかと言うことが重要である。

ローテク・ハイテクのいかんを問わず、いまある事業をベースにIT・ネット技術を融合させることができるか、と言うことが問われている。この意味で21世紀初頭は新創業時代の幕開けの時代でもあると思う。

(小川 湧三)

 


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