公的年金を考える

国民年金未納者が40%を超え、年金制度改革に関心が集まっているなか、だんご三兄弟ならぬ年金未納三兄弟から始まった国会議員年金未納問題は、多くの国会議員のみならず政党の党首や大臣なども未納期間があることが判明し、年金問題が騒がしい。

官僚に任せられるか

年金に対する官僚の考え方が如実に表わされているものが、1986年に行われたという「厚生年金保険の歴史を回顧する座談会」の記録である。

雑誌、文芸春秋2004年5月号に掲載されているところによれば「年金の掛け金を直接持ってきて運営すれば、年金を払うのは先のことだから、今のうち、どんどん使ってしまっても構わない。

使ってしまったら先行き困るのではないかという声もあったけれども、そんなことは問題ではない。・・・将来みんなに支払う時に金が払えなくなったら賦課式にしてしまえばいいのがから、それまでの間にせっせと使ってしまえ」とのことである。

もし本当であれば大切な年金を官僚の裁量に任せることはできないと考えるのは考え過ぎだろうか。

国民年金は貰い過ぎ?

国民年金制度が昭和36年(1961年)4月に始まった。そのときの掛け金は月額100円、年額1200円であった。この時に20歳であった人が60歳になったのは平成13年(2001年)で晴れて満額受給できる年金が年額804,200円である。40年前に積み立てた掛け金を今受け取る積立方式であれば運用利回り年率17.67%、670倍に達している。

このような経済の実態や年金数理と乖離したギャップを財政や世代間で負担する公的年金制度が破綻することは目に見えている。

年金制度を考える視点

公的年金制度を考える視点は次の六つではないかと思う。
①給付水準をどこに設定するか、どう考えるか。最低生活(生活保護)水準、最低生活の上乗せ水準、現行所得の一定水準などが考えられる。
②公的年金の財源をどう考えるか。積立方式によるか、賦課方式によるか、税方式によるかである。
③運用責任をどう負担するか、確定給付方式と確定拠出方式がある。
④公的年金の制度維持や運用コストの負担を誰がどうするか。
⑤制度変更時に発生する制度間のギャップをどのように調整するか。
⑥どこまで国民に強制ないし義務化するかである。

年金制度はどうあるべきか

結論からいえば、最低生活水準は確定給付の税方式、上乗せ水準は確定給付の積立方式、所得比例水準は確定拠出の積立方式、制度ギャップは賦課方式で行うのがよいと考える。

また、公的年金の制度維持や運用コストは国庫負担、つまり税負担で運用の中味に政府・官僚の裁量が及ばないようにすべきである。公的年金制度は40年50年にわたる制度である。年金数理に基づいた制度設計が為されるべきである。

また、スエーデンのように毎年掛け金・拠出金、予定受給額等を国民に通知するなど透明化すれば義務化する必要は無い。このような観点で年金議論を見守りたいと思うのである。

(小川 湧三)

 


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