団塊の世代と年金問題
年金破綻問題
さる10日NHKを見ていたら団塊の世代と年金の問題について議論をしていた。
年金問題についてはこの欄でも第57号、第63号と取り上げてきた。再度また取り上げたいと思う。年金破綻については以前から取り上げられていたが、目先の財源不足に対する対処療法だけが取り上げられて、基礎年金を税金で負担せよ、とか保険料を引き上げよとかいわれている。しかし、なんとなく近視眼的な議論に終始して違和感を感じた。
年金の世代間扶養論はまやかしである
国民年金は昭和36年(1961年)の発足当時は積立式であった。ところが、始めてみると当然ながら受給者が少ないためにお金が溜まるばかりである。
役人が吃驚して世代間扶養と言うことにして賦課制度に切り替え、年金が「足りなくなったらそのときはそのとき」と決め込んで使ってしまった。
そのツケが満額受給できる人が出始めた平成13年(2001年)に廻ってきて、溜まっているはずの年金原資の不足が明らかになってしまったのである。
第63号(平成16年6月発行)で取り上げたところの一部を右欄に再掲したい。
年金は本来個人で築くもの
もちろん、国家が国民の福祉に責任を持つことを否定するものではない。しかし、自分の老後は自分で築き護ることは一般的常識であると思う。
年金には「年金数理」という統計的に成り立つ理論がある。これに従えば現在の医療費、介護費、標準生計費などは統計的に算出されており、現在の年齢、金利水準などを前提に60歳あるいは65歳にどれだけ原資が必要か計算できるものである。
たとえば現在35歳であれば、現在の積立額に不足する金額を積み立てるのにあと30年間にどれだけ積み立てればよいかが計算できる。仮に国が一定割合を保障することとすれば、政府拠出金としてそれを出口で負担するか、毎年上乗せ負担するかをその時々の財政事情で決めればよいのである。
年金の統合と制度転換問題について
年金は国民年金、厚生年金、公務員・教職員の共済年金など5つの年金制度に分かれているがこれらをすべて統合し、スウェーデン方式のように個人個人にあなたの年金拠出額は○○円ですと職業に関係なく報告することが望ましい。
別紙は通知書の試案であり、年初・期中・期末の各金額を報告できる仕組みが必要であろう。
このようにすれば自己拠出額、雇用主拠出額、政府拠出額が明瞭になり、いま大きな問題になっているような国民年金の不払い問題や未納問題は起こらないのではなかろうか。
もう一つ年金問題を考えるときに考えなければならない問題は、年金制度を維持・運用するためのコストの問題である。いまはこのコストを年金保険料の中で賄うようになっているが、このコストは政府が税金の中で賄うようにすべきである。社会保険庁の無駄遣いの多くは国民から預かっている年金原資をあたかも自分たちのお金と錯覚して使っているところにある。
年金制度の変更は一世代かかる事業であることは昭和36年に始まった国民年金の基礎年金を満額で受給できるのが平成13年であることからもわかるように長い年月を要するものである。
制度転換によって生ずるギャップについては計算上明確になるので、そのギャップをどのようにして埋めるかについては政策論議として論ずればよいと考える。
税理士法人 LRパートナーズ 代表社員 小川湧三
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