消費税総額表示騒動

消費税込み総額表示が始まった

4月1日から昨年改正された消費税法による小売価格の総額表示が始まった。

総額表示は消費税込みの総額を消費者に明示することで

①消費税込みの総額だけの表示
②総額と消費税額の補充表示
③総額と本体価格の補充表示
④総額と本体価格と消費税額の補充表示
⑤本体価格と総額の補充表示

のいずれかの方法で表示することを義務付けたものである。当事務所では⑤の表示を推奨していたが、私が立ち寄ったファミリーレストランではメニューが⑤の方法で「品名・本体価格・(税込価格)」と表示されていたのでほっとした。

しかし、私たちのお客さまのほとんどは今までどおりの本体価格をそのまま使っているようである。当事務所が⑤の方法をお奨めするのは、これから予定されている消費税の税率アップの度に適正に対応できると考えるからである。今からでも遅くは無い、始まったばかりだから⑤の表示方法に改めよう。

消費税率の引き上げは必然

小泉首相は自分の在任中は消費税率の引き上げはしないといるが、任期最長の3年後には消費税率が引き上げられることになる。

財政赤字、年金問題、公社公団の不良債権問題などについて現在行われている議論を見ていれば、小泉首相の在任中であっても消費税の引き上げがあっても可笑しくは無い情勢にある。現在の5%から最低10-15%へ引き上げられることことも想定しておく必要がある。

消費者の納税意識が希薄化を恐れる

新聞の報道によれば、消費税の総額表示による新しい価格を「値上げ」と受けた消費者が39%もいたということである。また、ユニクロはじめ大手小売業・家具店などが販売競争力強化という経営戦略の一環として価格据置を打ち出した。

反面、中小・零細企業の多くは、消費が低迷しているなか消費者の「値上げ」の反発をおそれ価格表示を据え置いた。また、価格表示自体を中止してしまったところもあると聞く。

さらに、消費税は間接税としての性格を持っており、総額表示は消費者に消費税に関する意識を希薄化させることは、お酒やガソリンに課税されている酒税やガソリン税をみれば明らかである。

経営の選別を加速する

総額表示は「販売競争力強化」と「資金繰り」の二つの面で経営戦略的に非常に重要な要因となった。つまり、他社との販売競争において消費税を消費者に転嫁せずに、本体価格を引き下げ販売表示価格を据置き競合他社に対して競争優位に立とうとする経営戦略をとったのである。

そのため消費税を転嫁しなければ企業収益が悪化する企業の多くも従来の本体価格表示を税込価格として表示せざるを得ない状況に追い込まれてしまったのである。もう一面は、資金繰りである。

消費税は預り金的性格を有し、赤字企業であっても営業収益に関係なく納税をしなければならないため、消費税の納税が企業の資金繰りを圧迫し困難にする状況が生ずる。これから消費税の引き上げが確実に来る時、販売力の弱い企業の淘汰・選別を加速させる重要な要因となろう。

(小川 湧三)

 


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