資産デフレから賃金デフレへ

資産デフレ加速

昨年暮れ以来2―3月危機説が流されていたが、空売り規制などのPKOにより3月末は株価11000円台を回復して金融機関はじめ企業は初めての時価会計による決算を迎えてほっと一息ついたところである。しかし、グラフで見るとおりPKO効果によるものであり必ずしも楽観できるものではない。

さらに3月26日に発表された公示地価は11年連続して下落し一段と下落率を加速させている。3月29日に発表された消費者物価も東京都区部では3年連続して下がりデフレ傾向を強めている。ちなみに世界銀行は日本の2002年のGDP予測をデフレの加速で▲1.5%(2年連続マイナス)と予測している。

中小企業に厳しい金利上昇の気配

4月15日アメリカの格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が日本の長期国債格付けを「AA」から「AA-」引き下げた。長期国債の金利は日本の金利の基準であり格付け引き下げにより金利が上昇することになる。金利上昇が何時から始まるか皆固唾を飲んで注目しているところであるが、予想より早まりそうだ。国債格付けの引き下げと今年から始まるIMF審査が引き金になるかもしれない。

2001年の企業倒産は昭和59年につぎ戦後2番目の水準だそうである。中小企業の景況感は引き続き悪化しており、金融機関の企業選別と年末にかけて不景気の金利高が予想され景気は一層厳しいものになりそうである。

賃金デフレへ

3月恒例の大手企業の労使交渉が行われ、今までの賃上げ交渉が今年は軒並み「ベースアップゼロ」となり現行の賃金体系を維持することが最大の焦点となって、賃金カットを含む賃金体系の見直しと新たな労使関係を模索する段階に入った。

一方、失業率が戦後最高を維持していること、在宅勤務者が300万人を超えたこと、ワークシェアリングが公に提案される等の動きが出ている。一方、中小企業では賃金カットが広がりつづけており、なによりも雄弁に賃金デフレの進行を物語っている。春闘は全産業で公にそれを確認したところに大きな意義がある。

新たな景気局面へ

資産デフレが10数年の間下げ止まるどころか、一層加速し、ついに賃金デフレまで顕在させることになった。賃金デフレのもたらすものは更なる消費の低迷である。35号で紹介した「衝撃のコラム」が現実味を帯びてきた。

ペイオフ解禁、国債格付け引き下げ、IMF審査と過去のIMF介入の措置を見るとき戦後実施された預金封鎖・デノミ(新円切り替え)の実施、不況下の金利高によるハイパーインフレなど一部論者の懸念が現実味を帯びて新たな景気局面へ入ったように感じられるのは杞憂だろか。

(小川 湧三)

 


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