賃上げ

賃上げ総動員

岸田首相は政権発足以来、物価上昇分を上回る賃金引上げにより消費拡大を基調としたデフレ脱却、景気回復を政策に掲げてきた。

今年の通常国会における施政方針演説でも「デフレ脱却宣言」とともに「経済再生が政権の最大の使命」と強調し「賃金が上がることが当たり前だとの意識を社会に定着させる」と述べ、連合や経団連、経済同友会など経済団体に働きかけてきた。

賃金崩壊を齎したもの

なぜ賃金が崩壊したのか。遠因はソ連崩壊によるグローバル・エコノミーの始まりと、その直後に生じたバブル崩壊により、日本企業が低賃金を求めて中国・東南アジアへ国内事業を整理し進出したことに始まる。

このころ、大企業の研究開発部門の人材が韓国・中国企業へ高額な報酬で招かれて、技術指導や研究指導に出向いていたなど人材の流出が始まっていたのを記憶している。

中国がWTO(世界貿易機関)に加入したのを機にグローバル・エコノミー全開とばかりに国内の生産拠点を中国へ移転した。

このように国内の生産基盤を崩壊させ、中国・東南アジアへ展開するとともに国内の生産拠点を縮小し、高度人材のリストラや派遣切りに象徴されるように、大半の賃金労働者・派遣社員を放り出した。

このような賃金低下は、中国や東南アジア諸国の賃金水準に下がるまで続く。既に円安で外国人労働者の送金額が目減りし日本で働くインセンティブが無くなったと聞く。

アメリカが日本・ドイツなど第二次大戦の敗戦国に工業生産を奪われ、今、ラストベルトに見られるように、国内の製造業を衰退させた、と同じ現象のように見える。

しかし、アメリカは新たな産業、IT、サービス業など新規産業を創造し世界をリードし、現在に至っている。

外国人労働者

「外国人労働者、初の200万人超「特定技能」伸びけん引」という記事が載った。

賃上げを求めながら賃金の低い外国人労働者を積極的に入れる政策は矛盾しているのではなかろうか。

賃上げをしなければならない時に賃金を引き下げる要因となる特定技能労働者を大量に受け入れることは政策の趣旨と異なるのではないかという疑問を持っている。

バブル崩壊後数次に亙る中国進出によって日本の企業は国内の産業基盤を崩壊させ企業内の高度人材をリストラし、それら高度人材は中国や韓国へはるかに高額な報酬で引き抜かれて移り、現在の中国や韓国の高度成長の原動力になった。

賃上げを進めるのであれば、アメリカのように新たな産業基盤、特に世界に後れを取ったIT関連産業を復興させる技術革新を起こす高度人材を海外から積極的に招聘し、推進し賃上げの導火線にする方がはるかに良いと思う。

賃上げに先立つもの

もうひとつ、賃上げに先立つものとして戦後連綿として続いている大企業の定年制を廃止し、有期雇用制に切り替えることを提案する。

最長10年、最低1年、年齢により年数は変化してよい。働き盛りの20~50歳までは最長10年の有期雇用として、期間満了したときに再雇用を前提に雇用条件、労働条件を再協議し雇用を継続する。協議が調わなければ離職することもよし、現在の定年年数を超えれば、雇用期間を短縮し1年更新でもよいであろう。大企業に定年雇用制で滞留している人材を解放することが経済活性化にはより早道に思える。

地方を豊かに

「賃上げ」による経済活性化も大切だが、むしろ地方の人口を都市に吸い上げるストロー現象が激しくなってきていて、地方の衰退が加速度的に進んでいることが「地方の人口減少」報道に顕著に表れているように見える。

賃上げ政策を否定するわけではないが、東京一極集中を排し、地方へ産業を誘導する政策がもっと優先さるべき事項だと考える。地方が消滅しては「豊かな日本」は消えてしまうと心配している。

塩野七生氏はローマの政治を論じて、辺境の地に人民を定着させるため税を免除する政策を紹介していた。

この政策に倣って、地方の崩壊を防ぐためにも人口減少の著しい地方を指定し5~10年消費税を減免し、あるいは免除する政策を採り産業を誘致し、人口増の定着を図る政策を採ってはどうであろうか。

地方が経済的に豊かになり、風光明媚な日本文化が花開くようにしたいものである。

 

LR小川会計グループ
代表 小川 湧三

 

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