日本のインフレは何処へゆくのか

長らく日本はデフレが続き、日本銀行は10年近く物価上昇率の目標値を2%としてきた。その間にも各国の賃金は上昇し続けていたが、日本の賃金は30年以上ほとんど変わっていないし、賃金が上昇している海外から見た場合にはむしろ大きく下がっている。

昨年4月に消費者物価指数が2%を達成したが、その主な要因は生産性向上による賃金の上昇から生まれる需要の上昇である「デマンドプル型」ではなく、そのほとんどはウクライナ危機等による資源・エネルギー価格の上昇である「コストプッシュ型」インフレで賃金の上昇要因はほとんどなかった。

このコストプッシュ型は消費者の可処分所得を実質的に押し下げることとなり、賃金が増えない場合には、給与が下がっていることと同義になる。この10月に最低賃金が神奈川県で1,112円となるが、購入頻度を考慮した物価分析では上昇率が10%を超えているという指摘もあり、実質的に賃金の上昇とはいえないかもしれない。

この1,112円を高いと捉えるか否かはそれぞれだが、全国主要都市の有効求人倍率が2021年1月に約1.0倍であったのが、2023年6月には1.31倍となっている。

このことを踏まえると、今いる従業員の給与を最低賃金分だけ増やすことで対応していたとしても、その従業員がいなくなった場合に求人する際の募集賃金は、最低賃金では応募がない可能性が高まっていることがわかる。

中小企業にも賃上げの強いプレッシャーがかかっている現状だが、しかしそのためには生産性を向上させなくてはいけない。日本にとって生産性の向上は、デフレ脱却と同じくらい長年の課題だ。生産性の向上を「コスト削減」と捉えていては賃金上昇が見込めない。経営者も従業員も、成果や付加価値を増やすことで賃金上昇が伴うことを覚えておかねばならない。

世界的なインフレはコスト上昇要因が減りつつあるが、人手不足による賃上げ要因は収まる気配がない。他方で円の実力を示す「実質実効為替レート」は7月に74.34となり、1ドル=360円の固定相場制だった時代と同水準になった。このままでは海外から日本が引き続き賃下げしていくようにみえるだろう。

 



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