物足りない少子化対策

50年後8700万人

会長

またまた人口に関する報告が発表された。50年後2070年に人口が8700万人になるとの推計値が報告された。2008年をピークに減少に転じて15年が過ぎた。人口規模を維持するのに必要な合計特殊出生率2.1を下回り始めたのは1974年からで50年になる。政府も何度か少子化対策を打ち出してきたが効果があったとは言えない。

私たちは「日本は資源のない国、日本は人=人材が資源」といわれて育ってきた。明治開国以来、人口過剰論もあり、移民政策を大々的に行った時期もあったが、戦後の目覚ましい経済復興により世界でも指折りの豊かな長寿社会を実現した。しかし、バブル崩壊とそれに続く「チャイナ・デフレ」で見る影もない日本になりつつある。

「日本の資源は人口=人材」である。ノーベル賞の受賞者の輩出もその表れの一つとみることができる。
このような視点から見ると現在打ち出されている少子化対策は物足りないのである。

労働力視点からしか見ない女性

なぜか。対策の多くは

①女性を労働力の視点からしか見ていないと感じること
②生まれてくる子供からの視点が決定的に欠けている

と思うからである。かつて、寿(結婚)退職、おめでた(妊娠)退職が焦点に当たって女性の労働力としていわゆる『M字カーブ』の話題が取り上げられた。M字カーブは解消されつつあるが、人口減少・少子化の傾向は止まらない。いままた、こども庁を発足させ労働の障害になる『子育て』に焦点を当てて、異次元の対策を取ろうとしている。しかし、子育てが就労の大きな負担になっているとの認識から、このような「育児」に焦点を当てた施策が実施されるのは理解できるが、その背景となる家族制度や長寿高齢化社会をも含めた少子化対策としてのグランドデザインが見えてこない。

こどもを主体に

月刊「VOICE」5月号に「少子化と子供政策の大問題」として特集が組まれていた。生まれてきた子供の〝親の貧困〟〝親の働き方〟が中心に取り上げられていて、ピント外れの感がしたのである。

「生まれてきた子供」から「生まれてくる子供」に焦点を当てるべきではなかろうか。

現在の少子化対策は親の視点からしか見ていないようにみえる。生まれてきた子の親の貧困・親の就労障害に焦点を当てている。確かに民法では子供の扶養義務は親が担っている。だから、親の経済力によって子供の成育環境は大きく左右されているのが現状であることは間違いはない。

しかし、子供が出生した時から人としての法的権利主体となっているのである。生まれたその瞬間から、いや、受精したその瞬間から人として生きる権利が保証されているのである。妊娠が確認されたときから法的保護の対象とし、政策を進めるべきではなかろうか。

私は、ほっとタイムス4月号に「異次元の少子化対策」として「私は桜井氏と同じく子供を育て育む家庭を中心とし、少子化対策は

①生まれてくる子供中心
②第一子出産年齢を25歳以下に引き下げる
③女性に対する施策を労働力中心から母性で育てる

政策にシフトが望ましいと考える。」と書いた(※アンダーライン表現を変更)。

子育てとともに成長する女性

アメリカには数十回行っているが、20数年前にアメリカでは保育園を併設しているハイスクールや大学があると聞いてびっくりした記憶がある。子供の成育・成長とともに親の成長と経済的社会的に自立できるように、と。今、日本の現状を考えると、日本でもこのようなことが必要なことではないかと思えてくるのである。男性と10年のタイムラグは起きるが、子育て後は子供の成育に中断させることなく社会人としてキャリアを積めるようにしたいものである。女性の平均余命は男性より10年長いことを考えれば、子育て期間として考慮すべきことではなかろうか。

異次元の対策:こども年金を

「生まれてきた子供」から「生まれてくる子供」へ親の環境に左右されることなくすくすくと成長できるように子供に経済力を与えよう。その方法は「こども年金」である。親の環境に左右されることなく生育できるようにしてはどうであろうか。親の経済力に応じて「養育手当て:子育て手当」の支給を考えてもよい。

財源はどうする!既存の諸施策の統廃合すると同時に、不足する財源については、ほっとタイムス22年11月号(第284号)「新税源論」をご覧ください。



 

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代表 小川 湧三

 

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