100万円 → 360万円贈与

今年の税制改正

今年の税制改正は2年前の自民党税制改正大綱に取り上げられたものが参議院議員選挙のため繰り越され2年越しに改正されるものである。

タワマン節税や格差是正などから相続税・贈与税の資産課税、世代間格差に焦点を当て、相続税、贈与税の改正が大きな目玉になった。

特にNISA(少額投資非課税制度)の改正とともに世代間の資産移転を早期に促進する狙いがある。

富裕層への税制のゆがみを是正する趣旨で税制改正大綱で取り上げられていたものを具体化したもので、いろいろ憶測を呼んでいたものが具体的になった。感想を言えば、まあこの程度の改正で良かった、というのが率直な感想である。

贈与加算期間の延長

今年の改正の目玉の一つは、相続開始直前の駆け込み贈与を防止するため、相続税の申告の際に加算する相続開始直前の贈与加算の期間を3年から7年に延長したことである。

注意しなければならないのは、相続開始直前の3年間は年間110万円以下の贈与であっても加算の対象となる(現行法通り)が、延長された4年間(4~7年前)の贈与については、総額100万円を超える贈与が加算の対象となることである。紛らわしいので注意を要する。

相続時精算課税制度の簡素化

第二の改正は相続時精算課税の改正で、相続時に贈与財産を相続財産に加算して申告することを条件に、2500万円まで贈与税を非課税にする制度である。

この制度を選択すると、以後相続が発生するまで、贈与があったときは、金額の大小を問わず、申告しなければならないが、改正により毎年110万円以下の金額については非課税とし、贈与時、相続開始時ともに申告の対象から外れることになった。

つまり、相続時精算課税を選択しても、110万円以下の贈与であれば、贈与の申告をしなくてもよく、相続時においても申告しなくてもよくなる。

相続直近の贈与であっても、贈与加算の対象から外れることになり、ちょっと贈与加算の措置と整合性が取れない感じがするが、非常に使いやすくなったといえよう。

NISAの改正

今年の改正では岸田首相の「新しい資本主義」の具体化の一環としてNISAも大幅に改正されることになった。18歳以上の受贈者が年間限度額360万円(内訳「つみたて投資」120万円、「成長投資」240万円)、最高非課税枠合計1800万円まで、売却により限度額以下の残高になると、不足分を新たに非課税枠に積み立てられるなど複雑だったNISA制度がすっきりと整理され非常に使いやすい制度になる。

常に、限度額一杯にしておいて、利益が出た時は売却し、利益は非課税だから、お小遣いになり、自分へのご褒美として利益を現金化し使い、元本部分を限度額一杯買い足しておく戦略が面白いと思われる。

100万円 → 360万円贈与

今年の税制改正は非課税枠の110万円以内の100万円贈与が主役になりそうである。

100万円贈与はLR小川会計グループでは贈与税の基礎控除が60万円の時代から積極的にお客さまに推奨してきたものである。一口で言うと100万円をお正月に贈与して定期預金にすると4~6万円の定期預金利息が付いた時代で、贈与税の申告する時には4~6万円の利息が付いて、贈与税の申告をし4万円の贈与税を支払ってもおつりがくる時代であった。当時は定期預金しか適当な金融商品はなかったが、NISAは資産形成の面でも推奨できる金融商品と思われる。

100万円と言わず、NISAの非課税枠を有効に利用するためにも、NISAの限度額一杯360万円贈与することをお勧めする。贈与税27万5千円(平均税率7・6%)、5年間で137万5千円、所得税課税所得360万円の所得税と地方税を含めて773千円、相続税の限界税率は平均30~40%であるから、25%~30%負担が軽くなる。1800万円を贈与した相続税節税効果は贈与税の平均税率と相続税の限界税率との税率差を30%とすると540万円の相続税の軽減となり、かつ、その後の収益は相続対象から外れるから相続税の節税効果はさらに大きくなると思われる。

長期投資の性質上、早ければ速いほど効果が大きいので、思い切って最初の5年間に非課税枠を一杯にした方が有利になる。

新NISAが始まったらすぐスタートできるように準備しよう。

 



LR小川会計グループ
代表 小川 湧三

 

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