それでも用心しよう

第三次安倍政権誕生

3年前の年末に民主党政権からの政権奪取を目指して行われた総選挙に続いて昨年も年末に総選挙が行われ、自由民主党、公明党の与党の圧勝といえる3分の2を超える議席を獲得し、安定政権が誕生した。

総選挙では財政再建とデフレ脱却を掲げてアベノミクスと銘打って政権運営を行ってきた第二次安倍政権の政策の是非を問い、かつ、地球儀を俯瞰する外交を旗印に国際社会への信認回復を図った成果をも併せて問うものだった。引き続きアベノミクスの更なる推進と国際社会に対する信認の回復を求めているものと受け止めている。

第二次政権の評価と今後

民主党から政権を引き継いだ第二次安倍政権は「アベノミクス」を旗印に機敏に行動し、それまで日本中に覆っていたデフレマインドの払拭に成功したと思う。ほっとタイムス3ページの「法人決算概況」を見ても昨年は一年を通じて明らかにお客さまの経営内容が良くなっているのが見て取れるのである。

しかし、8%への消費税増税は実体経済に意外に重くのしかかりデフレを脱却したとは言えない状況である。第三次安倍政権に期待されるのは第一の矢、第二の矢の効果の余韻があるうちに第三の矢である「持続性ある成長戦略」を早急、かつ、強力に実施することを期待しているのである。

一抹の不安

今度の解散総選挙では消費税増税を平成 29 年4月まで1年半延期し、 必ず消費税増税を実施することを公約した。ところが消費税増税延期によって日本国債の格付け引き下げが行われたことにより、海外の投資家が日本の財政破綻について意識し始めたとの報道もでてきた。

来年以降の景気に赤信号が付けば、アベノミクスの失敗と判断され消費税増税に赤信号が灯り「財政破綻」懸念が表面化する危険がある。

延期した増税環境を整えるためにどんな政策を取るのであろうか。そこに一抹の不安がある。事実上の財政ファイナンスに踏み切った日本銀行と、3分の2という絶対多数の安定した政治力を手にした第三次安倍政権は、かつてドイツが実施したようななりふり構わない経済政策をとってもおかしくはない。

ドイツの例

小林慶一郎氏は「ジャパン・クライシス」に、ドイツのハイパーインフレの前の様子を次のように書いている。(p.162~)

「1923年にドイツで起きたハ イパーインフレでは、最初は一見、景気がよくなった。外国からの観光客も増え、レストランも繁盛した」

「当初ドイツでは、初めのうち、 資産家階級を中心に派手な消費が行われていたようです。しかも金利が低いので、我先にとお金を借りまくって、不動産に投資する連中も出てきた。一年かそこらで資産を何倍にも増やす、ニューリッチ層も出現したのです」

「当時の人々は、いま起こってい るのが悪性インフレだ、という認識がなかったらしいですね。為替相場で外貨に対して、マルクがなぜかどんどん安くなっていき、国内の物価が上がり続ける。とにかくマルクが不足している。じゃあ、というので、足りない貨幣を供給するため、貨幣を印刷しまくった」

それでも用心しよう

3・ 11 東日本大地震の時の災害対 応として「釜石の奇跡」が伝えられ、率先避難することが讃えられている。その後「東南海トラフ地震」などの大規模な自然災害が想定され、自然災害については、政府は対策を積極的に行い、かつ、呼びかけも行っている。

しかし、いま懸念されているハ  イパーインフレや財政破綻に伴う
「X-DAY」等の経済災害ともいうべきことについては口を閉ざし、逆にこれらの経済災害を敏感に感じ取り、これから逃れようとする国民に網を張って逃れられないようにしようとしているように見える。

たとえば、昨年実施された「海外財産申告制度」、今年の税制改正に織り込まれ、7月から実施しようとしている富裕層に対する「出国税」がある。増税を強化するための「マイナンバー制度」の実施もその一つであろう。

自然災害から自ら身を守らなければならないように、命こそ取らないが、命の次に大事な財産を根こそぎ奪いかねない「経済災害」に対しても国民一人一人目をこらし、耳をそばだて注視し、自分自身で財産を守る自衛策を考えていかなければならない時が来ているのではなかろうか。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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