タックス・クレジット・カードの提案、マイナンバー制再論

マイナンバー制の本質

マイナンバー制度、グリーンカード制度、納税者番号制度、名前は変われど出ては消え、消えては出てくる番号制の背景は、課税の公平、総合課税、行政の効率化などが理由に挙げられてきたが、今度は消費税増税と絡めて、逆進性解消、所得格差是正のためと称して「給付つき税額控除」導入とセットで提案されているのである。

前月号でも述べたように、マイナンバー制度は「牛刀を持って鶏を割く」に等しく格差を解消すべき対象者以外の人々に対しても大きな影響を及ぼすことは明らかである。

収集しようとするあらゆる情報、すべての人、国民の経済行動のすべてに対して網羅的に番号をつけさせようとするマイナンバー制度は、目的と手段を取り違えたものと言わざるをえない。

社会的弱者に絞った対策を

消費税は低所得者層や社会的弱者に対する税負担率が相対的に高くなることは導入当初から消費税に内在する問題として認識されていた。

20 %を超える消費税率を導入しているヨーロッパ諸国や世界の国々では何らかの逆進性対策を講じているが、いずれも一長一短があることは広く指摘されている。その中の一つである「給付つき税額控除」を取り入れようとしているのであるが、現実的でないことは先月述べたとおりである。

高率の消費税ともなれば、何らかの逆進性対策、低所得者対策を採らなければならないこともやむを得ないものといえよう。そこで社会的弱者に絞った対策として(仮称)「タックス・クレジット・カード」を提案してみたい。

タックス・クレジット・カードの概要

その概要は、本当に支援が必要な生活保護世帯、障碍(がい)者世帯、子育て世帯、失業保険受給者等の人々に対して「タックス・クレジット・カード」を交付し、消費税の減免を受けようとするときはその都度、クレジット・カードのように事業者のレジにタックス・クレジット・カードを提示させ、消費税を軽減・免除された代金を支払うようにする。

事業者は控除した消費税については厚生労働省へレジ・データを転送し、厚生労働省から消費税の振り込みを受ける、という極めてシンプルなものである。

本当に支援を必要とする人を見極めたり、不正受給を防止するためには、これらの対象者に対して、正確な実態を把握することが必要不可欠である。消費税免除のタックス・クレジット・カードを交付することによりこれらの対象者の行動が把握できるようになり、正確な実態把握ができるようになることは、今のIT技術をもってすれば容易なことである。

タックス・クレジット・カードのメリット

タックス・クレジット・カード方式は、IT化社会・カード社会に馴染んでいるキャッシュ・カードやクレジット・カードに類似したシステムであり、以下の様に多くのメリットが期待できる。

①複数税率を採用しなくてよい。
②必要な人にピンポイントで支援できる。
③逆進性を緩和できる。
④社会福祉制度の検証が容易にできる。
⑤不正受給のチェックがしやすい。
⑥複数の社会保障制度での併用可能。
⑦制度設計が自由に対応できる。

特にタックス・クレジット・カードのデータ分析により、社会福祉政策等の効果や実態を把握することが可能になる。

また、一定金額ないし範囲を超えるカード使用者については個別調査を実施することにより、不正受給を監視し防止することが可能となるであろう。

タックス・クレジット・カードは生活保護世帯、失業保険受給者、障碍(がい)者世帯、子育て世帯等、必要に応じ区分し、全額免除、半額免除などの免除率、免除限度額、適用期間等をカードに必要情報をインプットすれば状況に応じて柔軟に対処できるものと考える。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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