「経営者のあり方」

稲盛和夫京セラ会長の講演を聞いて

先日、稲盛和夫京セラ会長の講演を聴く機会があった。「火中の栗を拾う」 心境で、JAL再建に乗り込み再建を果たした経緯と中核となる「経営理念」の話であった。

その中で、人生・仕事の方程式 (※)として「能力」は生まれつき与えられたもの、「努力」は後天的なもので 自分の力でできるもの、いずれも0〜100点の間にある。能力点が低くても、努力で補うことができる。しかし、「考え方」は▲100〜100点の間にあり、いくら能力・努力しても、その方向が間違ってしまえば仕事も人生も台無しにしてしまう、と いう趣旨であった。

(※)人生・仕事の方程式 人生・仕事の成果= 能力×努力×人柄・考え方 (内外情勢調査会メールマガジン: 2011・7・25日号)

その後、大王製紙事件、オリンパス事件、内柴事件などが起きた。大王製紙事件は、創業者の三代目が幼少のころから頭脳優秀と折り紙つきで経営者の地位に就いたと聞く。 オリンパス事件は、優秀な製品を次々と生み出す国際的な企業でありながら、バブル崩壊に伴う損失を「飛ばし操作」で隠して、上場廃止の瀬戸際にある企業である。内柴事件では、オリンピックの金メダリストが極めて不名誉な行為により社会的地位を失ってしまった。

経営者のしごと

私は経営者のしごとを大きく三つに分けている。一番目は「事業の創業・創造」、二つ目は「事業の成長」で経営者の努力に負うところが大きい。三つ目は「事業の継続・発展」である。

企業は経営者の器以上には大きくならないといわれるが、「事業の継続・発展」は「経営者の成長」に依拠するところが大きく、稲盛哲学の「考え方・人格」の部分である。経営者の心がマイナスの方向に向かった途端に、継続を危うくする。

今回の不祥事のごとく今までの多くの人々や、自分の今までの血のにじみ出るような努力が一瞬にして潰えてしまうのである。

経営者のしごとと心構え

企業や事業の大小にかかわらず、経営に携わる者は1人でも1000人でも人を使い、人の上に立っていかなければならない。そのことを真剣に考えている経営者はいるだろうか。

「事業の成長」までは一生懸命に考えていても、意識的に「経営者のとしての成長」、稲盛氏の言う「人柄・考え方」を磨くことを意識している人は少ないように見受ける。

経営者は経営に関しては最終責任を持ち、最終決定を行う者である。ある意味では絶対的な権限を持っている。これが時として経営者の地位にある者に対し「経営者は何でもできる」という誤ったメッセージをあたえる。

いつの間にか自分の人格・人柄による力と経営者と いう立場・権力、権限からくる力とを混同してしまうのである。権限、権力が強ければ強いほど、力を包み込むように心掛けなければならない。

経営者を育てる道場は あるか

大王製紙事件を見るとき経営者をどう育てるかは大きな課題である。稲盛氏は盛和塾、松下幸之助氏はPHP研究所が中心となって、その経営哲学ともいうべき経営思想の普及活動をしているが、創業したての企業家や中小企業の経営者では敷居が高すぎるのが難点である。

しかし、松下幸之助氏や稲盛和夫氏や土光氏、本田氏など戦後の名経営者と言われた人々の説く経営哲学の「扇の要」とも言って差し支えない経営者の道場がある。

それは経営者の自己革新を目指し研鑽を行っている「倫理法人会」で、まさにアクティブな経営者を育てる経営者の道場というにふさわしいものである。

倫理法人会は稲盛氏の『人生・仕事の方程式』の「努力」「人柄・考え方」をわかりやすく説き、松下幸之助氏のいう「素直なこころ」の実践を明快に説いている。

経営者は絶えず経営判断を迫られている。「一瞬の決断が運命を決める。しかし、その準備のためには、何年も何年もの時間をかける必要がある(東郷平八郎)」というように、常に決定・決断を迫られている経営者には絶えず自分に対する気付きを拡げる場、自分を磨く道場が必要だと考えている。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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