「無税国債を考える」

無税国債は金持ち優遇か

このほっとタイムスが発行されるときには、民主党の党首選は終わっているのだが、民主党代表選挙にあたり9月2日に行われた日本記者クラブ主催の公開討論会で、小沢さんが財源の一つとして「無税国債」に触れていた。

無税国債は相続税を非課税にして、国債をお金持ちに買って貰おうというものである。無税国債発行の案は今までも何度も出ているが、その都度金持ち優遇と批判され、発行が行われずにきた。

しかし、今お金持ちの手の中に眠っているお金を、「お金持ちの相続が始まるまで使わせてもらう」と考えるとわかりやすいのではなかろうか。

つまり、「償還財源を相続税とする無税国債」を発行して相続まで 10 〜 20 年の間、その無税国債を所有してもらう方が、国民経済的には有効ではないだろうか。 国債を発行して得たお金をその間有効に使えれば、相続税の何倍ものお金の循環が生まれ、法人税、所得税、消費税として優遇を受ける相続税を前倒して税収に還元される効果がある。

優遇批判は感情的に判らなくはないが、内需拡大が叫ばれている今、お金の循環と 経済効果を考えれば、政策の一つとして検討する ことは意義のあることだ と思う。要は無税国債を発行して得たお金を有効に使えるかどうかにかかっているのである。

また、中小企業が保有した場合には相続時の株価算定の基準となる資産から控除すれば、さらに無税国債の購入が増え、効果が増大するであろ う。

無税国債は相続対策とし て使えるか

無税国債は、相続に係わる税理士としてお客さまにどの程度お勧めできるのであろうか。無税国債の流通市場の整備や、国債保有の諸条件によって一概には言えないであろうが、流通市場が整備されており、必要性が生まれたときにいつでも購入できるように流通市場が整備されていれば、国債にプレミアムがつくかもしれない。

しかし、購入・保有の要件を厳密に(たとえば、非上場株式の納税猶予に係る保有要件のような)定められると、あえてお勧めするような有利性はなく なってしまうと考えられる。さらに、財政破綻懸念の中で予想されるインフレ、デノミネーション等まで考慮するとフリー ハンドをなくしてしまう ので機敏な対応ができなくなるデメリットのほうが大きくなるであろう。

無税国債とソブリン・クライシス

既に報じられているように、日本の債務は 904兆円に達し、ギリシャ問題に端を発した国家の財政破綻問題は、日本の財政破綻についても実現可能性のあるものとして論じられている。すでにお金持ちのお金はタンスの中にあるわけではなく、金融機関を通じてその大半は国債の購入に当てられている。

ここで無税国債を発行するとお金持ちが金融機関からお金を引き出して、無税国債を購入する預金の引き出しが始まる。金融機関が預金の支払いのために、金融機関が保有する国債の売り圧力になり、逆に財政破綻の引き金になる可能性も無視できないものである。

郵貯改革を逆戻りさせ、国民におもねる民主党政権の政策とあわせ考えると、小沢さんの無税国債の発想は戦時国債を発行したときのような〝戦費調達国民総貯蓄運動〞を思い出させる。

いよいよ国民も自分の身を護ることを真剣に考える時期に来たようだ。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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