「ゆりかご」から「墓場」まで

8 ・ 3 0 総選挙

このほっとタイムスが発行されている頃は 8・30 総選挙が終わって結果がハッキリと出てしまっている。しかし、この選挙では「長寿社会の社会保障」である年金や、介護・医療負担などの社会保障や雇用不安・賃金の伸び悩みなどが最大の争点となったのである。

選挙に向けて国民の世論調査でも、選挙に向けて公表された各政党のマニフェストでも、国民の関心は「年金」「医療・介護」「子育て」などが真っ先に挙がっていて、福祉社会への道が今度の選挙において自由民主党か民主党かを選ぶ、政権選択の指標にされた感がある。

生存コスト

生産年齢を超えて収入がなくなると、想定される人生を支える年金や介護・医療費は人が生きていくためのコスト、生存コストとして、捉えることができる。

生存コストについては昨年7月号で「高齢化社会と生存コスト」として紹介した。育児や教育のコストは、社会投資として考えることもできることも紹介した。生存コストと捉えることは、無機質的で違和感を感ずる人も多いかもしれないが、議論をわかり易くするので使わせて頂く。

生存コストは過去の貯蓄・積立て又は、現在の生産年齢人口の経済によって支えられる。反面、経済力を超えては支えられないことは自明のことである。これは一人ひとりにとっても、国家レベルでも同じである。

また、コストとして捉えることができるならば、少なくとも現在発生しているコストは計算できるのである。毎年々々の生存コストを年齢別に計算し集計すれば、自ずと現在の生産人口が負担すべきコストと、過去の、すなわち老齢人口の属する人たちが自ら準備すべきコストの全体像が、ハッキリと浮かび上がってくる。

その上で現役世代が負担すべきコストを差し引いた残りのコストを自ら負担すべきものとした制度設計が為されるべきものと考える。

既に 世代間扶養論は破綻しており、基本を積立拠出型に置き、不足分を税金でどの程度補うかがポイントとなる。

私の平均余命図は

私の平均余命を①私が生まれた年の平均余命は44・82 歳②生まれたときの平均余命に達した年の平均余命は 71・73 歳 ③更にその年齢に達した時の年の平均余命78・56 歳を図表化したものである。この間、私の平均余命は②の時に27 年 ③の時にはさらに7年平均余命が伸びているのである。単純に34 年( 44・82→78・56 ) 当初の1・75倍平均余命が伸びているのである。

また、私の現在年齢の平均余命は約20年もあることになって、当初の約2倍になっている。このように、長寿社会が実現してくる過程で社会構造も変化してきているのであるが、この変化を年金制度や医療費制度に対応させてこなかったところに、大きな問題が潜んでいるのである。

日本の将来は戦後のイギリス型か

国民年金制度は昭和 36 年から発足し、そのとき加入した人が40 年経った平成13年に始めて満額をもらえることになった。このように高齢者を巡る社会保障システムは、長い期間がかかるのである。従って、その間には様々な社会・経済環境の変化・国民の人生観を含めた変化に柔軟に対応できるメカニズムが織り込まれていなければならないのである。

今度の選挙を通じてみていると、あまりにも対処療法的な施策が目に付きすぎるのは私だけであろうか。

イギリスではサッチャー改革以前は「ゆりかごから墓場まで」という合言葉で、福祉社会国家として先進的な見習うべき社会の模範とされてきた。しかし、イギリスは第二次世界大戦前までは世界の基軸通貨国として君臨していたが、戦争による国力の疲弊と共に、植民地の相次ぐ独立により、アメリカに基軸通貨国の地位を明け渡し、日本にもGDPで抜かれてしまった。

充実した社会保障は誰もが望むところではあるが、人口が減少し、GDPも下降に転じ、グローバル化した世界の中にあって、発展途上国と激しい国際競争に晒されている日本を見るとき、選挙公約のマニフェストをみると年金・介護・医療福祉・子育て等々、かつての「ゆりかごから墓場まで」政策に縛られたサッチャー以前のイギリスのように、沈滞した時代に入るのではないかと危惧するのである。

LRパートナーズ代表社員 小川湧三

 


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