もうひとつの「アメリカ」

オンリーワンからワンオブゼムのアメリカへの始まり

GMの終焉

No124_18928720 世紀のアメリカを牽引してきた自動車産業のビッグスリーの一角、GMが事実上破綻し、「GMに良いことはアメリカに良いこと」とまで言われたGMが、事実上国有化されることが決まった。

言い尽くされているが、アメリカの住宅バブルの崩壊により、サブプライム問題・証券化問題・CDS問題と、世界の金融を取り仕切ってきたアメリカが、金融システムの行き過ぎから、証券銀行が消滅したのをはじめ、金融機関も公的資金を注ぎ込み、救済しなければならない事態に陥ってしまい、GMですら国有化しなければならない程、大不況に陥ってしまった。

その結果、アメリカへの輸出に大きく依存していた世界経済は、急速に収縮し「百年に一度の大不況」といわれる事態になってしまったのである。

アメリカが風邪を引けば日本は肺炎を引き起こす

昔から「アメリカがくしゃみをすれば、日本は風邪を引く」といわれていたが、今回はアメリカが命に係わる肺炎を引き起こしてしまったため、日本もたちまち心筋梗塞を起こしたようなショックを引き起こしてしまった。

その結果、日本国内の輸出関連企業は総崩れとなってしまった。昨年の「派遣切り」騒ぎにはじまり、輸出関連業界は今年の1月から大幅な在庫調整を行い、私たちの周りの中小企業の中では「3ヶ月間発注ゼロ」、長いものになると「秋口まで発注ゼロ」というものもあり、日本中不況色一色に塗りつぶされた。

世界中で始まった日本型発展

日本が敗戦の中からここまで伸びてきたのは、戦後、敗戦による廃墟の中に海外から大勢の引揚者の帰還により、人口が急増したことにある。物のない中、急増した人口を養うために、作れば何でも売れた時代を経て、ゆとりが出てくると国内で熾烈な品質、サービス競争を繰り返した。

そして、いつの間にか「安かろう・悪かろう」から「安くてよい物」を供給する体質が出来上がったことである。「安くて良い物」を供給するシステム・ノウハウは一旦海外へ出てみると、他国を寄せ付けない競争力を身に付けてしまっていた。

この日本型発展が 20 年前、共産主義が崩壊 して世界が共通の互換性のあるシステム=資本主義になって、全地球規模で一斉に目覚めて動き始めた。それまで貧富の格差があってあたり前であったBRICs※(ブリックス)に代表される世界の人口の40 %を占める国々が猛烈に消費に目覚め始めたのであ る。

※BRICs (ブリックス)と は、経済発展が著しいブラジル (Brazil) 、ロシア (Russia) 、イ ンド (India) 、中国 (China) の 頭文字を合わせた4カ国の総称

もうひとつのアメリカ

私はベルリンの壁が崩れた頃から、毎年海外視察等に参加しているが、毎年見違えるように発展してきている。しかし、よく見るとその中身は、アメリカに見ならった日本型発展の再現である。すなわち、巨大なビルディングやマンション群・道路・自動車・電化製品などである。ファッションも日本で言う洋装である。

アメリカンドリームが世界中に拡散し、アメリカスタンダードやアメリカ流消費生活が「近代化」の象徴であり、「発展」の中身になっている。いまこの繁栄の象徴として消費に目覚めた中国・インド・ロシア・ブラジルなど巨大な人口を抱える国々が、アメリカンスタイルに向けて動き始めている。

オンリーワンから ワンオブゼムへ

アメリカは今まで、第二次大戦後世界の経済の中で圧倒的な地位を占めてきた。アメ リカがオンリーワンとして世界を背負って、アメリカンドリームを支えてきたのである。

しかし、1989年、共産主義社会のソ連が崩壊し、中国が1992年の南方講和によ り、資本主義への舵を切り、全世界がアメリカ型近代化へ向かって走り出し、いま漸くアメリカ型の近代化にキャッチアップしようという時代が来たのである。

普通の会社になったGMの終焉は『オンリーワンであったアメリカが、ワンオブゼムのアメリカになろうとする始まり』と考えるのは考えすぎであろうか。

早ければ今年中に中国の国内総生産(GDP)の規模が日本を上回り、米国に次ぐ世界第二位になる。もしそうであれば、これからはこれらの国々をアメリカへの輸出品の低コスト生産基地としてではなく、これらの国々をもう一つのアメ リカとして、その国民に受け入れられる製品の輸出先として再構成することが必要なのではなかろうか。

LRパートナーズ代表社員 小川  湧三

 


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