事業承継税制「贈与税の納税猶予制度」

事業承継税制

No124_171937124月から動き出した事業承継税制の中には、「贈与税の納税猶予」の制度が盛り込まれました。

この制度は、後継者が先代経営者から会社の株式を一括して贈与された場合、贈与税の納税を猶予するという制度です。(ただし、最終的には、その後先代経営者の相続が発生した際に、その相続税の計算に取り込まれ、「相続税の納税猶予」 に移行して行くことになっています。)

この制度を使うことによって、とりあえず贈与税という移転時(贈与時)の税コストを負担することなく、先代から後継者へ株式を承継することが可能になります。

税金の面では最終的に相続税の納税猶予に収れんされていきますので、あえてこの制度を使うことはないのではないかとも思えますが、後継者が株式という会社の支配権を早い時期に確保できることは、後継者が会社を経営していく上で非常に大きなメリットですので、活用していくべき制度であると思います。

この「贈与税の納税猶予」の制度の適用を受けるにあたっては、株式を贈与する先代経営者は役員から完全に退くことが要件とされています。他方、贈与を受ける後継者は役員就任から3 年以上経過していることが必要とされています。

これは、この制度を利用していく場合には、贈与を受けた以後は後継者が先代の力を借りることなく経営者として会社を運営しなければならないということを意味しています。

したがって、この制度を適用する場合には、株式の移転だけを考えておけばいいのではなく、後継者が実質的にも経営者として会社を運営していく能力・体制を整える準備があらかじめ必要となってくるのです。

また、先代経営者は役員から完全に退くことになるので、今後の収入(役員報酬) がなくなることになります。中小企業の事業承継においては、経営者のハッピーリタイアメントをどう実現するかということが一つの大きな目的です。

この制度を利用する場合には、退職金や先代経営者の今後の生活といった先代経営者のリタイアメントプランをきちんと立てて準備をする必要があるのです。繰り返しになりますが、「贈与税の納税猶予」制度は、後継者の会社支配権の早期の移転という意味で大きなメリットがありますので、利用を検討していく価値のある制度です。

ただ、制度の利用については十分な検討・準備をしてから実行に移していく必要があると思います。

株式会社LR小川会計
代表取締役社長 小川泰延

 


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