次世代WEBで戦う売れっ子店長の秘密①

次世代WEBで戦う売れっ子店長の秘密① たのもうや@武道具店
コミュニケーションで育っていくネットショップ

次世代にシフトするインターネットショップ

2006年9月、まだ残暑厳しい中、大井町きゅりあんのある会議室では西研究所主催によるOA大会が行われていた。OA大会はマトリックス会計で企業経営に取り組む人たちがどのようにコンピューターを使って経営改善をしているのか、という発表の場である。

偶然、この発表会に出席してネットショップで急成長しているある剣道具店の若い店長に出会った。最近、実店舗とネットショップを併用して、利益増大を図っている実力派新進勢力である。

2004年11月にスタートしたショップは剣道具専門で約2年経った現在、月商700万を超えるという。一時間半にわたって語られた成功のプロセスを書いていきたい。

秋田県湯沢市の剣道具店によるIT革命

秋田県湯沢市は秋田県南部に位置する地方都市である。
2005年には(旧)湯沢市、雄勝郡雄勝町、稲川町、皆瀬村が合併し、湯沢市が誕生し、人口5万5千人となった。内陸の穏やかな町だが、剣道愛好者が大変多く、「剣道の町」というもうひとつの顔を持っている。

この町にある東海林武道具店は昭和50年創業であるが、創業者の東海林信一氏は離農して剣道具の製造を始め、剣道防具一式を手で組上げることのできる東北地区でも数少ない職人の一人と秋田さきがけ新報の記事に見ることができる。

小中学生の剣道部や愛好会で使用されている剣道防具の90%は主に外国製で寸法が身体に合わないとか、呼び寸法が同じでもサイズがまちまちなどの問題があるという。身体に合った物で鍛錬する方が自ずと剣道が好きになっていくという信念があるので、東海林武道具店では価格は少々高くはなるものの、国産でサイズが揃っているものを提供することにこだわった。

日本の伝統文化を継承する剣道具店がインターネット上にショップを開き、斬新なショップ運営で時代の先端を行くことになったのはある理由があった。

少子高齢化が取り沙汰される昨今、湯沢市も例外ではなく、むしろその加速は速い。

東海林ネットショップ店長(以後、東海林店長)によると現在、湯沢市内の中学校7校のうち、5校で延べ部員総数は30名ということである。
前に述べたように伝統的な剣道を一貫して支えてきた東北有数の剣道具店であっても剣道人口自体が減少し、人口自体も減少傾向になっていけば市場は急速に縮小してしまう。

そこに危機感を持った東海林店長は顧客拡大を図るためには現在の市場以外にも積極的に拡大戦略を取ることが必要だと強く感じ、平成16年11月にインターネットショップ「たのもうや@武道具店」を開店した。

卸、小売業のホームページでショッピング機能を持ったものは数えきれないほどあるが、ほとんど売上げがないものも中にはある。

インターネットショップ専任の社員を置いていても年間の売上げは数万という、笑うに笑えないような事情のホームページが多数あるのも事実である。その半面で巨大インターネットショッピングモールである楽天市場などでは数十億を売り上げるショップも現実に存在している。

平成12年ごろのITバブル期にはインターネットにホームページを持てば、新規顧客が自然に増えるとまで妄信させたほど、ホームページというツールそのものに異常な期待が寄せられたが、現実は厳しく繁盛する店とそうでない店の格差が広がった。

その結果、現在では売れる手法とコンテンツを持たないショップは何をやっても売れないというように明暗がはっきりと現れた。

そんな時代の只中で平成16年の「たのもうや@武道具店」開店である。このインターネットショップは開店から約2年経った現在、年商1億に迫る勢いの実力あるショップとなっている。

ショップの立上げはスピード勝負

後発のネットショップにはずいぶん厳しい情勢下で「たのもうや@武道具店」はわずか一ヶ月で開店に漕ぎつけた。本格的な開店前にショップオーナーの先輩たちからスピード勝負ということを学んでいたからであった。

インターネットが急速に普及した平成11年から12年はネットショップは手探り状態であったが、次の4年間はインターネットの裾野が広がりを見せるのに並行して徐々に店舗運営のノウハウが蓄積された時期でもあった。

当時、耳にするようになったのが「サーチエンジン最適化」と言われる手法で、インターネットの膨大な情報から自分の欲しい情報に到達するために必ず使われる検索エンジン(ヤフー、グーグルなど)で上位に表示されるようにするためのテクニックである。

この他にも同時期に商品構成の作り方、価格、集客、販売、顧客維持、ブランディングなど実際の店舗販売を上回るようなノウハウが具体的な形で一般の目に触れるようになってきていた。

その流れに後押しされて東海林店長は自らパソコンに向かい、ホームページ制作、ショッピングシステムの組込み、上位表示の後に明確になってきた売るための法則「サーチエンジンマーケティング」を意識したショップ構築を一気にやり遂げた。その時間がわずかに一ヶ月だったということなのである。

この俊足はただがむしゃらに準備を進めたということではなかった。
マネジメントゲームで身体に覚えこませた企業戦略思想を現実に生かす場面に直面して、販売に打って出る前に周到に市場をリサーチした上で組上げられた戦略そのものだったのである。

<次回へ続く>

 


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