税制改正の季節

税制改正の季節

No93_15142357毎年10月から税制改正の季節が始まる。川崎商工会議所も毎年9月になると税制改正要望を政府や関係機関に提出している。税理士会も毎年膨大な内容の税制改正要望書を提出している。

各界から提出される税制改正要望を受けて来年3月を目指して政府税制調査会(政府税調)や自由民主党税制調査会(党税調)が税制を固めていく。

小泉構造改革が進むなか財政再建を目指す財務省に押されて低所得層を中心にした所得税増税がなし崩し的に行われてきた、われわれ中小企業を見てきているものにとってはなんともやりきれない気持ちであった。しかし、今年の税制改正は今までの税制改正とはやや趣が異なるようだ。

発揮された安部首相の強いリーダーシップ

安部政権が誕生して政策運営の方向がはっきりと見えてきた。財政再建・増税路線から経済成長・減税路線への方向である。

安部首相の強いリーダーシップで政策方針を実現すべく組閣、その後の政府・党の人事において財務相、経済財政担当相などの経済関係閣僚の人事、政府税調・党税調会長、党政調会長などの人事において財政再建派を一蹴し、経済成長路線を明確にした。安部政権を歓迎するものである。

税制改正の方向

現在マスコミを通じてわれわれに流れてくる情報では、企業の国際競争力を高めること、経済・産業の基盤である企業特に中小企業に焦点を当てた企業減税を打ち出していることなど中小企業にとって心強い方向が出されている。

①減価償却制度の国際化
②留保金課税の廃止
③中小企業事業承継対策
④証券税制の激変緩和

などが取り上げられると聞く。

減価償却については①5%残存価格制度を全額償却へ②耐用年数の短縮などであるが、減価償却制度については、欧米の投資回収としての減価償却に対し日本は物理的減価の評価という側面があり、減価償却に対する欧米と日本の考え方の違いが際立っている。技術の進歩による経済的劣化が早い現在では欧米型の投資回収型の減価償却制度への転換が望ましい。

留保金課税についていえば、中小企業は長期にわたるデフレ経済下で内部留保を食いつぶし体力・余力はないに等しい。デフレ進行下留保金課税は一部見直しがなされたこともあるが、経済再生のためにも中小企業の再生のためにも留保金課税は廃止すべきである。

内部留保に関連していえば、相続等の場合に換価価値のない中小企業の株式に多額の相続税が課されており、中小企業の存続を怪しくさせている。事業承継税制を抜本的に見直し、図にあるような制度へ改正が実現することを望むものである。

見直して欲しい税制

見直して欲しいもので今回の税制改正としてまだ上がっていないものもある。あげればきりがないが二つだけ指摘し、改正の実現を要望したい。

一つは、今年の改正で創設されたものであるが「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度」の廃止を要望する。

立法理由として会社法の制定により株式会社の設立が簡素化されたため節税目的の会社の濫用が懸念されるのを防止するためとされている。しかし、会社法の制定は法人の設立を容易にするために行われたのであって、現実は中小企業を直撃し、新政府の中小企業の内部留保を充実させる政策や会社法の制定理由とは相容れないものである。

二つ目は、デフレによって生じた資産損失による損益通算を制限してきたが、「貯蓄から投資へ」あるいは「再チャレンジ」政策を実現するために、リスクが取れる健全な中産階級を育成できるような税制にしなければならない。そのためには、所得税についても、バブル崩壊前の「損益通算制度」を復活させることが必要である。

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(小川 湧三)

 


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