今年は中小企業にとって良い年か

昨年を振り返る

昨年はいろいろな意味で転換期の一つであった。株価が15000円台を回復し、株式時価総額が500兆円をこえるなど国民の気持ちの上で明るさが出てきた。郵政民営化解散で自由民主党が空前の大勝を博し政治的な流れが一転したことである。

景気経済では2002年から始まった上昇基調が続き、さらには解散総選挙を前に「踊り場脱却宣言」が出され景気の更なる上昇が期待された。地価も都心部を中心にプラスに転じた。消費者物価も原油価格の高騰を反映して今年早々にもプラスに転じると想定されている。

このような背景の中で日本銀行は金融政策手段をゼロ金利維持を目的とした量的緩和政策から日銀本来の政策手段である金利政策へ戻るため「ゼロ金利政策からの脱却」への模索が始まっている。

しかし、量的緩和政策の解除をめぐり春にも実行したい日本銀行と時期尚早とする政府の間で綱引きが始まった。

今年の課題

今年の課題はこのゼロ金利解除が当面の課題となる。昨年の各種の経済指標を見れば福井日銀総裁の決意は理解できる。しかし、これらの大半は小泉改革政権の継続に期待した国民の心理的要因も多分にあるものと思われ景気の現状を巡る認識には差がある。

ゼロ金利の解除に向かう福井総裁の決意は、かって、バブル潰しと称して金融引き締めを強行しバブルの引き金を引いた「平成の鬼平」や、さらには速水日銀がゼロ金利解除をし景気を失速させデフレを加速させた例を思い起こさせる。

宮沢政権、橋本政権の時のように財政再建路線に転じた途端に景気の腰折れを起こしデフレを加速させた記憶も苦い思い出として残る。

歴史に学ぶ(再デフレのリスク残る)

安達誠司氏によると、

「現在の日本経済の脱デフレの動きを当時の米国と比較すると、回復パターンは酷似しており、当時で言えば1935年後半の状況(実体経済面の回復がある程度進み、金融面での改善が見られ始めた局面)に位置している。」

「法人税率の引き上げなど財政再建が同時に実施された影響も大きいが、最大の要因は、信用乗数の下げ止まりにみられる金融環境の改善が、実体経済の改善に約3―4年遅行してようやく始まったばかりのタイミングで出口政策が実施されたことであった。37年以後の後退局面における社債の信用力格差拡大や中小企業の資金調達額急減を考えると、「早すぎる出口政策」の実施が、中小企業の資金繰りを急速に悪化させ、これが経済全体に波及した可能性が高い。」(日本経済新聞2005/10/28「経済教室」)

と述べている。

中小企業の資金調達に焦点を当て言及しており、数多くある論説の中で問う事務所のお客様である中小企業を中心に論じている点非常に理解しやすい。

中小企業はさらに厳しい選別にさらされる

マクロ経済は確かに回復基調にあることは政策当局の判断の通りであろう。しかし、首都圏と地方の二極分化、地価も上昇の兆しは見られるものの90%以上の地域では下落傾向が止まっていないのも事実である。

雇用、設備、資産の過剰を解消した大企業とその煽りを受けて苦しんだ中小企業の淘汰とその二極化、消費もニューリッチ層と二極化しつつあり、盛況を謳われるコンビニでも既存店の売上減少は顕著になってきている。

また、都銀の不良債権処理は公的資金の注入もあってほぼ終わったが、地域金融機関の不良債権処理や再編はこれから本格的に始まろうとしている。

このような中でゼロ金利解除は金利のみならず物価の上昇を前提にするものであり、安達氏の指摘の通り地域金融機関の再編が始まろうとしている現在、中小企業にとってはさらに厳しい選別を受ける時代を迎えようとしていると思うのである。

(小川 湧三)

 


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