事業継承(株式と経営支配権)

ライブドアと堤コクド騒動

ライブドアが今度はニッポン放送買収劇でスポットライトを浴びている。堤家はコクドを通じて企業支配を続けるために西武鉄道の株主を偽って上場廃止に追い込まれ堤義明氏の逮捕にまで至った。

中小企業にも同じ問題がある

いずれの場合もまったく違った意味で企業支配を目的として事件になった。ライブドアの場合はニッポン放送を通じてフジサンケイグループを支配しようと敵対的買収を仕掛けたものである。

堤・コクドの事件は創業者である堤康次郎氏が創業した企業や事業を堤家の支配下に置くために遺産相続や相続税で株式が分散しないように苦心の対策が矛盾として噴出したものである。

ライブドアのような経営の支配権をめぐって苦労を重ねている中小企業経営者も多い。また、業績がよければよいほどコクドと同じような相続税や相続による事業承継が大きな悩みの種になっているのは周知の事実である。

中小企業の経営者は意外に株式の無関心

中小企業の経営者の多くは堤・コクド型で株式の殆どを同族で占め実質一人に経営権が集中しているが自社の株式に関心のある経営者は少ない。

しかし、中小企業の支配権をめぐる争いの多くは創業者から次世代への相続時に種がまかれていると言っても過言ではなくその多くの原因は相続税の重さにある。

相続税を軽減するために株式を分散せざるを得ない状況に追い込まれていることが図らずも今回の堤・コクドの事件で明らかになった。

堤義明氏への相続対策は万全であったが、三代目への相続対策は全く手が打たれていないように見える。これは中小企業にとっても同じで三代目への事業を承継させることに大きな問題提起を示唆しているのではなかろうか。

「唐様で書く三代目」

中小企業は三代支配権を維持し続けることが難しい制度の中で戦後60年を迎え事業も経営者も第三世代の時代に入った。中小企業はこれからどう進むべきか図のように四つの選択肢がある。

IPO・M&Aへの道は資本と経営の分離を前提としており、経営者としての力量が問われ、ライブドア型への道に入ることになる。

堤・コクド型事業承継の道を歩めば「兄弟は他人の始まり」であり一旦株式が兄弟姉妹・従業員持株会などへ分散してしまうと元に戻すことは至難の業である。ここに堤康次郎氏が「家憲」を書かざるを得ない必然があった。

現行の制度では三代目への事業承継の道はきわめて狭い道である。「唐様で書く三代目」と言う諺があるが、三代目は事業の創業と思い定め新規創業者の気概を持って経営者としての能力を身に付けていくしかない。

この点でもアメリカ型のライフスタイルに近づいている。時代も制度も変革しており、一に後継者の能力に係っている。

経営者としての能力をどう身に付けるか、経営支配権をどう確保していくか、換価が困難な株式にかかる相続税の納税資金をどう調達するかなど大きな課題が山積しているが、いま改めて後継者教育はどうあるべきか真剣に考えなければならないと思うのである。

(小川 湧三)

 


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