税制改正と税制改革

アメリカのブッシュ税制改革

アメリカのブッシュ政権は、5月9日11年間で総額1兆3500億ドル(約165兆円)に及ぶ減税法案を成立させた。金額のみならず法案の中身にはわが国では到底考えられぬ相続税の撤廃を含む税制の根幹を揺るがすような中身である。

アメリカでも相続税の完全撤廃は一部に根強い反対があったようであるが、日本で重税感に喘ぎ、節税対策という後ろ向きの対策に奔走しなければならない納税者から見れば夢のような時代を思わせる。

ドイツの税制改革

ドイツでも数年前、相続税、固定資産税に対する違憲審査からこれまた税制全般に関する画期的な判例が出された。

相続税、固定資産税、所得税、法人税など個別税目に限らず、いかなる税目をも問わず、その課税される税額の合計は、所得から生活に必要な経費を控除した金額を政府と国民が半分ずつ分け合う「五公五民」を超えることは違憲である、したがって、5年以内に税制を改正せよというものである。

その後はフォローしていないが、コール政権時代は実現できなかったが、現政権が税制改正に成功したと聞いている。

イギリスの税制

イギリスではブレア政権に対して、経済界から批判が相次いでいるようである(Forbes:June 2001)。ブレア政権になってから法人税、所得税は税率を据え置いて置いているものの、社会保障を含めて企業負担を多く求めている。

企業活動への政策介入が多くなり、サッチャー時代の「小さな政府」から「大きな政府」へと国民の負担が増加し、じわりじわりと経済活動を束縛しつつあり、経済界では失望感が急速に広がっている、とのことである。

日本の税制改正

今年の税制改正の目玉は、①企業再編税制であり②NPO法人への寄付③株価の低迷を受けて証券税制についても個人株主を増やすべく100万円の非課税扱いなどが取り上げられている。

こと、株式投資についていえば、「株は投機である」「私は株式を買っていせん」「株で儲けることは悪いこと」と、政治家や経済界の指導者が当然のことのようにいう。

こういう風土の中で行なわれる株式譲渡税制や年金破綻懸念から個人投資家を増やす「確定拠出年金」の導入も、いかにも姑息な手段にも見えてくるのである。

経済への不信感と閉塞感

不良債権処理問題は、政府が発表した「東京メガロポリス、金融センター構想」によって引き起こされた土地ブーム、その後の資産デフレよって全産業に亙る過剰債務問題にまで拡大させた政策の不手際がその本質である。

税収の減収を恐れるため、問題の先送りをしてきた政策の失敗を、「国民の自己責任」へ転嫁する政策は、政府に対する国民の不信感を大きくさせている。この失われた10数年、20世紀末は政府への信頼の喪失であったともいえるのではなかろうか。

(小川 湧三)

 


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