第68回 現物ビットコインETFが承認による従来金融システムへの問いかけ

情報セキュリティ連載
現物ビットコインETFが承認による従来金融システムへの問いかけ

騒々しいタイトルになってしまいましたが、今回は生成AIの話題は一休みさせて頂き、ビットコインに関するお話を1つさせて頂きます。

2024年1月10日に現物ビットコインETFが米国証券取引委員会(以下SEC)によって認められました。今回はこの現物ビットコインETFの承認がもたらす潜在的な影響についてです。

1 ETFとは

ETFとは上場投資信託とよばれるもので、日経平均や金などの指数に投資する商品のことです。

今回、SECがビットコインETFを金や原油などと同様の上場投資信託の対象として認めたことにより、米国の証券取引所で売買することが可能になりました。

今までビットコインの流通量は暗号資産(仮想通貨)取引所で売買するのみで市場規模が小さいものでしたが、ETF承認の成果、米国最大の資産運用会社であるブラックロックなどがビットコインを金融商品として扱えることになり、市場規模が一気に広がる形となりました。

実際、ETF承認後ブラックロックが取り扱うビットコインETFへの資金流入額が10億ドルを超えるなど、資金流入が続いてる模様です。

このようにETF化されると機関投資家を始めより多くの投資家の投資機会が増えることになります。

2 なぜビットコインがETFとして認められたか

すでに先物市場という市場ではビットコインのETFは認められていました。先物取引は価格予測がしやすい性質から価格変動の大きいビットコインには比較的投資しやすく、認められていました。ただ先物取引は価格の権利を売りか買いで購入するもので、実際の商品を購入する取引ではありません。それに対し現物ETFは実際の金融商品を購入するものです。

SECは現物ETFの承認にはマネーロンダリングなどの理由から元々積極的ではありませんでした。しかしながら、ブラックロックのような資産運用会社から先物ETFが認めているのになぜ現物ETFは認めないと訴訟まで起こされ敗訴、渋々認めるざるを得ない状況に追い込まれ、承認する形となりました。

資産運用会社が現物ETFにこだわったのは米国経済に資金が流入しやすい状況、ビットコインの大きなイベントである「半減期」を控えてることから利益は見込めると踏み動いた形です。

では世界経済の状況をみてみましょう。

3 世界経済の状況

まず、米国ですが依然として景気が強いです。強すぎて米国連邦準備制度理事会(以下FRB)は中々政策金利を下げられません。一時期は経済が強すぎて政策金利を更に上げるなどして急ブレーキをかけるハードランディングを行わなければならない状況がいわれてましたが、自然に景気状況をみながら政策金利を下げていくソフトランディングで収まるのではといわれています。

その大きな理由はやはりマイクロソフトを始めとするジャイアントテックの生成AI関連を中心とした事業の増収率が10%を越す好業績のためです。ただ、その中で少し気になるのがアップルです。ジャイアントテックの中で唯一増収率が2%にとどまり、主力の「iPhone」では厳しい現実を突きつけられているようです。

さらに今年は大統領選挙があります。大統領選挙イヤーでありこれも景気が良くなる傾向にあるので国民受けの良い政策が発表され、投資家も好感して株等の金融商品に投資する傾向が強まります。

そして、次に中国の経済状況ですが、状況はあまり芳しくないようです。米国の輸入相手国として1位を築いていましたがメキシコにその座を奪われました。元々不動産バブルが弾け経済成長に陰りを見せていた中国にとってはあまりいいニュースではありません。また、台湾総統選挙結果も中国の思惑通りにはいきませんでした。

以上の状況から中国への投資マネーは陰りを見せています。

最後に日本ですが、昨年11月、ウォーレン・バフェット率いる米国投資会社バークシャー・ハサウェイが日本株を購入する資金として日本円建債を1220億円規模で発行することを発表しました。

そして日本ですがマイナス金利解除後も今の現状の政策を維持するというスタンスを表し、円安はまたまた続くとの認識から円安が再進行。それに伴い中国からの投資マネーが流れ込む形となり、日経平均が好調な要因の1つとされています。

4 現物ビットコインETFの承認が世界の金融システム をつなぐシンボルとなる

米国経済はリセッション懸念を抱えつつも、暫くの間は上昇がつづくとの見方が多数です。ビットコインETFへの投資熱も大きくなるでしょう。

ここまでお話すると、当然ビットコインETFにより暗号資産の価値が上がるようなニュアンスをあたえていますが、私がここで申し上げたいのは、価値的な話ではなく、ビットコイン理論から生まれたブロックチェーン技術がさらに世界中の金融システムに大きく影響してくるということです。世界中に普及するにはやはり知名度的なもの、機関投資家が投資しているという安心感のようなものが必要で、今回のビットコインETFはその象徴になる出来事だと思います。

ビットコインのブームが去った後も暗号資産の技術開発は着々と進みネットワークトラブルに強いシステムが構築されつつあります。これは世界の半数以上の人が金融口座を持てずその代替としてブロックチェーンネットワークが採用されているのも大きな理由です。

一方、従来の金融システムは安全性を重視しすぎて、他の金融システムとつながることに重点をおいていません。結果1つの金融機関にトラブルが生じると、大規模な金融トラブルに発展しやすい状況にあります。冬の時代といわれている暗号資産業界にとって現物ビットコインETFは春を呼び込むものだと思います。金融ネットワークの管理者を必要としないブロックチェーン金融システムが普及し、世界のより多くの人々にビジネスチャンスが訪れることを願うばかりです。

《参考文献/日本経済新聞》

『AI時代の競争に入った米巨大IT企業(社説)』2024年2月5日付
『台湾の民間人取り込み中国、経済・文化に照準頼氏の新政権とは距離』2024年2月7日付
『ビットコイン、投資に道米SEC、ETF11本承認投資家保護巡り7年間「拒否」「推奨はせず」 異例の声明』2024年1月12日付
『中国、止まらぬ物価下落1月0.8%低下4カ月連続は14年ぶり』2024年2月9日付
『米バークシャー、円建て債1220億円起債3年債で0.955%』2023年11月18日付

※ 本記事に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも記事の内容として記載したものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。

 




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