損得感情

前回、私達は直感や経験で安易に判断してしまいがちだと紹介しましたが、別の研究によると、私達は得することよりも損することを避けることを優先し、さらに将来の利益より直近の利益を選んでしまう傾向にあるそうです。

様々な年齢層、国等の人々に、「もしあなたが次のような提案を受けた場合、どちらを選択しますか」と、次の質問をする有名な実験があります。

質問1

「Ⓐ 確実に9,000円もらえる」
「Ⓑ 90%の確率で10,000円もらえる」

質問2

「Ⓒ 確実に9,000円失う」
「Ⓓ 90%の確率で10,000円失う」

質問3

「Ⓔ 今日10,000円もらう」
「Ⓕ 1カ月後に12,000円もらう」

これらの質問に対し80%以上の人が、質問1ではⒶを、質問2はⒹを、質問3ではⒺを選択するそうです。

私達はまず、直感的に損の発生を避け(もらえるものは確実に、失わない可能性にかけたい)、そして目先の利益を確実に欲しいと考える傾向にあり、これを「認知のクセ」と呼ぶ識者もいます(損得感情)。

前回ご紹介した事例においても、みんなと同じようにしていれば自分だけが損することはないとか、現状を変更して失敗したらいやだとか、まずは損を避ける観点で選択し、明日の予定はわかるけど、1年先なんて想像できないのが普通なので、とりあえず目先の利益に飛びつくのもまた自然なことと思います。

正月早々に能登地方に大きな地震が発生しました。日本には大きな地震が周期的に起きることは理解していますが、それがいつ、どこで、どの程度の規模のものが起きるかは正確な予測は困難です。

地震直後は防災グッズがよく売れますが、時間が経過すると徐々に防災意識が弱まる傾向があります。中でも耐震工事がなかなか進まない理由として、「いつ発生するかわからない地震に対しお金を使うなら、すぐに便利になる自動車を購入することを選んでしまう傾向が強い」と専門家が解説していました。

私達は、損はできるだけ避けたいけど目の前の利益を優先する「認知のクセ(損得感情)」があることを理解した上で、限られた予算を何に優先的に使うのがいいのか、できるだけ多くの情報を集め、長期的に後悔のないお金の使い方をしたいものですね。

税理士法人LRパートナーズ
川崎事務所 所長 山下 功起

 



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