職場のSNS利用と労務管理

相談者:

最近、SNSの業務利用が一般化してきていると思います。労務管理上どういった注意が必要でしょうか?

社労士:

スマートフォンやSNSなどの通信手段の進歩により、いつでもどこでも人と繋がれる時代となりました。
業務での使用も増えてきていますが、「繋がりすぎる」という新たな問題がでてきています。欧州では、働く上での基本的な権利として、勤務時間外の「つながらない権利」を法制化しようという動きもおこるほど注目されています。

相談者:

「就業時間外、休日に繋がってしまう」ことにどのような問題があるのですか?

社労士:

問題は3つあります。

1 労働から完全に開放されないこと
2 労働時間が曖昧になること
3 ハラスメントとなる場合があること

休日は、労働から完全に開放されなければ休日ではありませんので、休日として認められない可能性があります。

また、業務用SNSに投稿された内容が黙示の業務指示と取られる可能性があります。その場合、未払い残業などの発生が懸念されます。労働時間管理の基礎として労働時間であるかそうでないか、あいまいな時間はなるべく作るべきではありません。

さらにハラスメントと認識される恐れもあります。上司からの定時外のLINEが、パワハラに当たるとして争われた裁判例があります。また、過重労働で自死した電通の若手社員の事件では、上司からの深夜の業務メールが問題となりました。

相談者:

休日に業務用SNSへ返事をしたら必ず労働時間となるのでしょうか?

社労士:

労働者が任意で返信する場合は、労働時間とはみなされません。しかし、任意であるかどうかは本人にしかわからないので、後々暗黙の指示があったと訴える場合も出てきます。任意であっても返信が頻繁であれば、公私のケジメがなく不適切といえるでしょう。

相談者:

業務用SNSを見ないようにすればいいのではないでしょうか?

社労士:

そう感じる人だけではないというのが実態です。通知がくれば緊急かもしれないと見てしまうのが心理かもしれません。通知をミュートにするなどの対策もありますが、勤務時間帯の異なる同僚への連絡には、気を使うべきでしょう。

近年、SNS疲れといった言葉ができました。好きでやっているプライベートのSNSでさえ、疲れるわけですから、少なくとも業務用SNSはプライベートに影響しないように配慮すべきです。

相談者:

対策はありますか?

社労士:

SNS利用のルールを作ることです。部署ごとのグループチャットなどは営業中、常に運用されると思いますので禁止することはできないでしょう。個別の呼びかけや、作業の予約などを控えるなどがルールとして考えられます。また、緊急連絡の場合は電話をするなど通信手段を使い分けるのも有効です。

現実には、最初に説明した3つの問題が顕在化することは稀だと思います。しかし、SNSの無造作な使用が続けば、少しずつ働く人の権利を侵害する「少し働きづらい」職場となりかねません。

SNS利用規程など、社内規程の作成やご相談は人事労務サービス部までご連絡ください。

 


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