第63回 チャットGPTについての包括的なレビュー⑥

情報セキュリティ連載
試される人工知能「チャットGPT」の実力

ここ数カ月、ビジネス誌を中心に特集で生成AIの具体的活用を取り上げた雑誌が多くなっています。内容は業務上の文章作成から士業を始めとする専門的なコンサルタント指南まで様々です。一方で、生成AIを利用する人が増え、意図した回答が返ってこない等の声も多く聞かれるようにもなっています。

生成AIの回答の精度は生成AIへの指示(プロンプトと言います)の精度で雲泥の差が出ます。今回は生成AIを業務で使う上での日本企業の認知度から、AIがもたらした環境変化について書かせていただき、生成AIの肝であるプロンプトについて触れたいと思います。

1 日本企業の約7割以上が生成AIに拒否反応

まず初めに、日本では、生成AIに対して拒否反応を示す企業が少なくないという調査結果(※1)があります。日本企業の72%が、生成AIを導入することに「ためらいがある」と回答したという調査結果です。生成AIに対して拒否反応を示す理由としては、以下のようなものが挙げられています。

•セキュリティに問題のあるアプリケーションで、企業が持つ顧客や第三者のデータが漏えいする可能性があること

•データの悪用や著作権侵害といった問題に発展した場合、企業が責任を追及されるリスクがあること

•セキュリティに問題のあるアプリケーションで、間違った情報やデマ情報が拡散される恐れがあること

•知的財産の盗難や大量のデータが盗まれて不正に使われる懸念があること

一方で回答者の多くが生成AIの使用による利点も認識している回答があり、以下のものがあげられます。

•革新性が高まる•創造力が向上する•効率性が高まる

確かに、生成AIの技術はまだ発展途上にあり、完璧ではありません。しかしながら時代の変化に対応するためには、生成AIの利点で認識されているように、新しい技術を取り入れていくことも重要だと思います。

2 古い慣習からの脱却の重要性

古い慣習からの脱却が、環境変化の激しい現代ビジネス環境で生き残る大きな手段といえます。新しいテクノロジーが現れた場合、まず早い段階で検証を行う必要性があります。具体的には行われている業務プロセスにおいて通常行われているプロセスと新しいテクノロジーを利用した場合のプロセスを検証します。なお、検証にはダミーデータを使用します。検証において、一定の効果が出た場合、次にセキュリティ面、コスト面での検証を行いそれぞれクリアした段階で実戦へ落とし込んでいきます。

古い慣習からの脱却、つまり従来行われている業務の流れが100%正解ではない、より良いものはないかという探究心が受け入れられる環境をつくることが重要だと思います。

3 米国の弁護士が生成AIを利用し訴訟の内容レベルを高めている

生成AIの潜在能力は、法律業界でも大いに評価されています。米国の弁護士たちは、AIを活用して訴訟の内容をより高度に分析し、戦略を練っています。これにより、訴訟の成功率が向上し、法律の世界でも生成AIの価値が確立されつつあります。

4 将棋界におけるAIとの共存

AIとの共存が進むのはビジネスだけではありません。将棋の世界でも、藤井聡太棋士がAIを練習相手として積極的に活用しました。AIは彼に新たな戦術や戦略を教え、将棋の進化に寄与しました。これは、AIが単なる脅威ではなく、新たな可能性を切り拓くことができる典型的な例です。

生成AIは、ビジネスのあらゆる分野で活用できる可能性を秘めています。生成AIを活用して、新たなビジネスモデルやサービスを創造していく企業が今後生き残っていくと思います。

5 プロンプト作成の技術が重要

生成AIをビジネスに活用するためには、プロンプト作成の技術が重要となります。プロンプトが適切でないと、生成AIは期待通りのデータを生成できません。プロンプト作成の技術を高めるためには基本となるプロンプトの形があり、最も有名なプロンプトが深津式プロンプトです。深津式プロンプトでは、以下の6つの要素を意識してプロンプトを作成します。

深津式プロンプト

•役割:生成AIにどのような役割を担ってもらいたいのかを明確にする
•入力:生成AIにどのような情報を入力するのか、その量や質を明確にする
•出力:生成AIにどのような内容を生成させたいのかを明確にする
•制約条件:生成AIにどのような制約を課したいのかを明確にする
•表現方法:生成AIにどのような表現方法を採用させたいのかを明確にする

この深津式プロンプトで週刊ダイヤモンド2023年9月9日号が弁護士の陳述書の作り方から税理士の助成金のアドバイス、社労士の人事評価制度の作成プロンプト事例を紹介しています。雑誌では具体的なプロンプト構成の方法を解説しており、興味を引く内容になっています。私もメールや、社内文章の作成の補助に生成AIを利用していますが、プロンプトの作成方法で出来上がってくる文章が全く違う事を実感しています。

次回はこの深津式プロンプトを利用した実務的なプロンプト集の紹介をしていきたいと思います。

《参考文献》

『ChatGPT仕事術革命』週刊東洋経済2023年7月29日号
『すぐコピペで使えるChatGPTプロンプト100選』週刊ダイヤモンド2023年9月9日号
※1:日本企業の72%が生成AIの職場利用を禁止する方針–BlackBerry調査
https://japan.zdnet.com/article/35208831/

 



 

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