新NISA(少額投資非課税制度) 生前贈与の活用と証券口座の相続手続

来年より拡充される新しいNISA制度。
今回は、生前贈与による相続対策と、NISA口座の相続時の取り扱いと証券口座の相続手続についてお話しします。

1 生前贈与のご提案

「子や孫へ生前贈与し、その資金を活用して受贈者である子や孫のNISA口座で資産形成を行ってはいかがでしょうか?」

◆ 相続税の節税効果が得られる

運用資金を贈与することで、相続税の課税対象となる資産を減らすことができます。暦年贈与であれば、毎年110万円まで非課税で贈与できます。

◆ 受贈者は利益が非課税で資産形成ができる

通常は、株式や投資信託で得た利益には、20.315%の税金が課税されますが、NISA口座で運用すれば非課税となります。20.315%分が運用にまわり、期間が長くなるほど大きな差になります。

◆ 子や孫の投資教育ができる

これから投資の知識は必要不可欠です。投資に興味を持つきっかけになり、子や孫が将来的に投資や資産運用をする際に役立つでしょう。

2 生前贈与の注意点

子や孫の本人名義の銀行口座・証券口座での取引となります。

◆ 名義貸しに注意

〇 贈与の証拠を残しておきましょう。
贈与証書を作る、銀行振込でお金の動きが確認できるようにしておく 等
〇 通帳・印鑑の管理は、口座名義人本人が行いましょう。
〇 一度贈与した資金は戻りません。ライフプランを立て、自分で使う資金はしっかり確保しましょう。

◆ 2024年以降の贈与より、相続発生時には段階的に相続開始前7年分の贈与が相続税の課税対象となる

暦年贈与の場合

2027年以降の相続では非課税枠110万円 × 7年分も課税対象となります。(孫の場合、法定相続人に該当しなければ対象外)

相続時精算課税制度の場合

110万円以上が課税対象となるため、110万円 × 7年分は非課税です。

3 生前贈与のシミュレーション ※ 相続税率30%と仮定

シミュレーション ⑴

60歳から新NISAで20年間運用し相続が発生
成長投資枠で1,200万円を運用

〔相続税〕240万円 × 5年(60〜64歳)まで買付 3%で運用継続
2,055万円が相続財産 2,055万円 × 30% = 616万円課税

シミュレーション ⑵

18歳の孫に5年間120万円贈与、20年間新NISAつみたて投資枠で運用

被相続人

〔贈与税〕{(120万円 - 110万円控除)× 10% }× 5年間 = 5万円課税
〔相続税〕相続財産600万円が目減り × 30%  180万円節税

相続人

つみたて投資枠で600万円を運用

〔所得税〕月10万円 × 5年間(120月)買付 8%で運用継続
2,429万円 - 600万円 = 1,829万円の利益 20.315%  371万円非課税

資産を増やしてから相続すると増やした分だけ相続税も増えます。

少額でも早く資産を次世代に渡すことで相続資産を減らし、更に次世代がNISA口座を活用することによって運用益・配当とも非課税になり、2つの節税効果が得られます。

つみたては早く始めたほうが良い理由:

早く始めることで運用期間が長くなると「複利での運用効果」が働き、運用結果に大きく差が出ます。

① 1万円を20年間
② 10年後から2万円 を10年間つみたて投資した場合

投資金額は同じでも①の方が評価額は高くなります。

また10年間継続する場合では、120分の1のタイミングでしかなく、1回の影響力は低くなります。

タイミングが重要な要素ではなくなり、いつでも始める事ができます。

4 NISA口座 相続時の取り扱い

◆ 相続開始時までの含み益は、非課税

亡くなった方がNISA口座で投資した商品の取得価額より相続開始日の時価が大きい場合、その相続開始時までの差額利益については、税金がかかりません。

◆ 亡くなった日以降に受け取った配当金等は、課税

亡くなった日以降に受け取った配当金や分配金は、非課税にはならず、所得税・地方税がかかります。

◆ 相続した投資商品を非課税のまま持ち続けることはできない

相続が開始した時点で被相続人(なくなった方)のNISA口座は終了します。そのままにしていては、売却したり、配当金・分配金を受け取ることはできません。

所定の手続き(次章参照)の後、相続人の一般口座または特定口座に相続時の時価で移管します。相続税の計算に含めるNISAの取扱いでは、株式等の取得日は相続開始日となり、取得価額は相続開始日の時価となります。

相続開始日以降に発生した含み益には、税金がかかり、非課税で持ち続けることはできません。また相続人がNISA口座を開設していても、相続によって取得した株式等はNISA口座へ引き継ぐことはできず、特定・一般口座での受け入れとなります。

5 証券の相続手続き

手続きの流れ

⒈ 相続人は、被相続人の死亡を知った日以後に、金融機関の「相続担当窓口」へ連絡します。取引内容・相続方法を確認の上、必要書類が送付されます。

⒉ 遺言書がある場合は遺言書に基づき、なければ相続人全員の同意の基に作成された「遺産分割協議書」などに基づき手続きします。

⒊ 金融機関の書類の他、「遺言を証明する書類」または「遺産分割協議書の正本」、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書が必要となります。◆ 「法定相続情報証明制度」を利用して「法定相続情報一覧図の写し」を取得すると、各機関の相続手続に利用でき便利です。

⒋ NISA口座の場合は「非課税口座開設者死亡届出書」「相続手続依頼書」等の書類を提出し、相続財産の名義変更手続きを行います。

◆ 基本的に、被相続人と相続人が同一の金融機関に口座がないと、手続きできません。なければ相続人は新たに口座開設しなければなりません。また、同一銘柄の株式等は、特定口座と一般口座とに分けての移管ができません(同一の口座への移管)。

まとめ

相続の際、複数の証券口座を持つ場合は、その口座ごとに所定の手続きと、同じ金融機関の口座が必要となります。有価証券(株式・投資信託・個人向け国債など)は、別の証券会社に移管できます。手続きが煩雑にならないよう、NISA口座を中心として、証券口座の整理をすると良いでしょう。

また生前贈与の活用も、一方的に行うのではなく、贈与した資金をどう活用するか、贈与する側と受ける側双方がコミュニケーションをとっていきましょう。

新NISA生涯非課税限度枠について

NISA口座内の商品を売却した場合は、当該商品の買付(簿価)分の非課税枠を再利用できるとなっていますが、非課税枠の復活は翌年となります。年度ごとの買付限度額は、つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円であり、そこにプラスされる訳ではありません。

クローバー通信8月号で説明(図表)では、当年中に枠の再利用ができる表現となっていました。お詫びして訂正いたします。

 

 

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