日銀はどう動く?


そろ~っと動き出した日銀

日銀は7月28日の日銀政策会合でそれまで長期金利の上限としていた0.5%の位置づけを「めど」に変え、上限を1%に引き上げた。

上限を0.25%から0.5%に引き上げた昨年12月の会合に続く動きだった。

アメリカが昨年3月以来急速に金利の引き上げを行ってきた。ヨーロッパではECBも追従して引き上げてきた。鈍化したとはいえ今年に入っても引き上げは止まらない。

8月25日ジャクソンホールでFRBのパウエル議長は、さらに年内引き上げを継続することを表明した。

昨年のFRBの連続金利引き上げに対して日本銀行の黒田総裁は全く反応せず今年4月任期を終え、植田新総裁へ引き継いだ。植田新総裁も就任後2回の会合において冒頭のように、はじめてそろ~っと動き出す気配を見せてきた。

安くなった日本

中国の香港一国二制度の廃止、「戦狼外交」に端を発し米中の決定的な対立が表面化したのを機に中国デカップ論、中国デリスキング論が台頭しトランプ政権下で表面化した。追い打ちを掛けるようにロシアのウクライナ侵略戦争でグローバル経済からブロック経済への転換が決定的になり、チャイナ・デフレの終焉が間近になってきた。

2023年8月号「チャイナ・デフレ」のタイトルで賃金が日本≒中国・東南アジアになるまで日本の停滞は続くのではないかと書いたが、高度人材の給与は既に中国に追い抜かれ、普通の人材についても、円安も影響して日本で働く魅力はなくなった。

先日のニュースでは、ある医療機関がフィリピンへ技能実習生の募集に行ったところ人が集まらなかった。日本の賃金を自国へ送金する時、円安のため魅力が無くなったためであった。

先日仙台の方と会食をした時の話である。仙台近郊の土地の値段がニュージーランドやオーストラリアの土地の値段よりはるかに安くなっているとのことであった。日本がアメリカの土地を買いあさったころのように海外から日本へ土地買いツアーがやってくる日が近いかもしれない。

近々の日本の課題

近々の日本の課題は何だろうか。

私たちは「X-DAY」がいつ来るかに関心をもって注視している。

新年度予算も台湾有事に備えた国防費、未曽有の少子化に対する対策費、「新資本主義」を掲げ、来年度の予算も114兆円を超え過去最高を超える予定である。これからの課題を考えれば財政需要はさらに拡大していくことであろう。

図表(※)は日本銀行が保有する日本国債がGDPに占める割合を戦前から直近までを示したものである。コロナ後の日本銀行の国債保有状況がいかに異常であるかを示している。

産経新聞8月8日 田村秀雄氏の「経済正解」「日銀の長期金利1%容認は『蟻の一穴』か」によると、「円売は国債売りを伴うので、日銀は国債買いを強めたが、投機攻勢に耐え切れなくなり、12月下旬には長期金利の上限を0.5%に引き上げた。そして、今年4月には植田総裁が就任し、黒田前総裁の緩和路線を維持すると表明した。すると金融市場はいったん落ち着いたが、円安傾向が再燃してきた。」と述べ、さらに植田総裁は「根拠のない投機的な債券売りがあまり広がらないようにコントロールする」と言明したが、事実上の金利上昇容認がさらなる投機を誘発し、日銀が市場に振り回される恐れは消えない。景気が順調に回復している中、日銀の性急な修正には疑問が残る。としてこれからの日本銀行の対応を注視していく姿勢をみせている。

日米欧の金融政策が年末年始にかけてさらに乖離していくことが明白になってきており、私たちは日本銀行がどのような政策を打ち出すのか一挙手一投足を注視していかなければならない。

※浅井隆 著「国家破産ではなく国民破産だ! 上」p.184〜185

 

 

 

LR小川会計グループ
代表 小川 湧三

 

 

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