第62回 チャットGPTについての包括的なレビュー⑤

情報セキュリティ連載
試される人工知能「チャットGPT」の実力

前回前々回と生成AIの実務的レビューを書かせていただきましたが今回は、生成AIの新機能を紹介し、生成AIが労働を奪うのか、その可能性について検証します。

1 chatGPTの新機能について

今回ご紹介するのは「Code Interpreter(コードインタープリター)」(現Advanced Data Analysis)という機能です。

Interpreterとは通訳者という意味で、機能としてはchatGPTに質問をすると文章とともにプログラムコードが走り出し、質問に応じたPowerPointやExcelデータなどを作ってくれます。

今までとの大きな違いは文章での回答のみではなく、ExcelやPowerPointのデータを生成してくれる点です。

プレゼン資料作成やExcelから資料を作成するには、ソフトの起動から文章データの打ち込みを最初から行わなければならなったことが、chatGPTにプレゼン内容の構成等を伝えたり、chatGPTへ売上データのExcelをアップロード、そこからデータ加工を依頼すれば各々に応じたオフィスファイルが生成されるようになり、業務効率や資料内容の精度向上が図られます。

2 Code Interpreter機能は有料版のみ

ただ、残念なことにこのCode Interpreter機能はchatGPT4.0という有料サービスのみとなっています。その他Googleが提供する生成AI「Bard」でも実装予定はあるものの時期は明確にはされていません。ただ、この分野は各社しのぎを削っているため、無償サービス提供をされるのもそう遠くはないのでしょうか。

このように益々便利になる生成AIですが、成長するAIにどう対応するかでやはり様々な課題に直面しています。

3 日本の教育はAI時代には通じない

先月から5回にわたり日経新聞で教育岩盤という連載が掲載されました。詳細は割愛しますが、内容は「正解主義教育ではこのAI時代には通用しない」というものです。

記事によれば、AI時代においては従来の正解主義教育の枠組みが通用しないとされています。日本の教育には失敗を恐れる傾向や指示待ちの現状が見受けられ、これが多様性を阻害し、価値創造やイノベーションを妨げる可能性があると指摘されています。

日本の教育は大量生産時代には通用した教育かもしれませんが、今回紹介しましたCode Interpreterのような技術は大量生産時代の仕事とかぶる部分が非常に多く、作業スピードや正確性では圧倒的に生成AIのほうが上な状況を見ると、生成AIに仕事が奪われるという議論が起こるのも当然かと思います。

その議論は2023年8月16日付日経速報ニュースの記事でもされており、2030年には生成AIの進化型である汎用型AIが普及しはじめ、ホワイトワーカーの職を奪うことが記載されています。

また、chatGPTを提供する米OPENAI社のCEOアルトマン氏も同様な見解をしており、生成AIが稼ぎ出したお金をベーシックインカムという形で還元するプロジェクトを立ち上げました。

4 果たして生成AIに仕事を奪われるのか

2023年8月16日の日経速報ニュースの記事でも、過去に起きた産業革命では一時的に職を失うも一定の時間を要して新しい仕事が生まれたが、生成AIの場合進化が早すぎて産業革命というよりは単なる労働代替になってしまうことが危惧されています。

記事では提案として、現状の仕事にAIを活用しながら新たな価値を想像することが新たな人間の仕事になるとしています。

記事にある通り、現状のフレームでは代替される意味合いでは生成AIに仕事を奪われるが正解だと思います。

5 生成AIが従来の業務を効率化、作業時間1/3に

ただ、従来の仕事に可能な範囲で画像AIや生成AIを利用して思うことがあります。従来当たり前に行っている業務に無駄があることに気付かされました。一番印象に残るものはメール文章の作成、返信作業です。月曜など週のはじめはお客さまやベンダーなど様々なメール返信に追われることが多いです。

かかる時は、2〜3時間それに追われることもあります。

メールの返信作業は相手や依頼内容等で文章構成や表現に非常に気をつかうものです。内容はすぐできるのに、表現で悩むことは多くあります。この業務を強力にサポートしてくれたのが 前回 の記事でも掲載しましたが、生成AIに文章構成を依頼することです。1通20分かかるような内容も、ものの数十秒で内容のまとまった文章を生成してくれる。生成された文章は指示した内容どおりで誤字脱字などもなく、作業時間を1/3以下にしてくれました。

仕事にAIを利用するようになってAIが仕事のサポートをしてくれることを実感しました。

エクセル関数の構成の質問を生成AIに投げた時のことです。自分が想定していた答えよりいい方法を提案してきました。また、プレゼン資料の構成に悩み、構成について相談すると、2〜3のヒントをもらえました。そのうちに生成AIを利用して効率化するのはもちろん、生成されることで、従来は作ることに割いていた時間をより内容を上げることに時間を使えることも実感している次第です。

仕事に生成AIを利用しての実感ですが、生成AIは自分の仕事を奪うというよりは、むしろ効率や精度を上げてくれるツールのように思います。

賛否両論絶えない生成AIですが、上手に活用することで新たな価値創造をもたらす可能性は非常に高いものだと思います。

生成AIの研修などが多く行われだしているので、会社、コミュニティでのルールを作成し上手に活用してはいかがでしょうか。

《参考文献》

『教育岩盤 突破口を開く ①〜⑤』2023年8月7日〜11日付 日本経済新聞
『大学、価値判断の教育重要に 井上智洋・駒沢大准教授-進化するAI変革迫る 意志や体験、独創性を生む』2023年8月16日付 日経速報ニュース

 



 

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