第57回ブロックチェーンゲームで小学生が月2万円稼ぐ時代が到来❾

情報セキュリティ連載
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6 コンピュータのセキュリティ構造も変える量子技術

金融を中心にブロックチェーンの技術が今後どのような影響を与えるかについて書かせていただきましたが、今回お話させていただくのはブロックチェーン技術が本格的に運用される5年~10年先頃に起こる新たなセキュリティ問題についてです。この小連載の最終話になります。そのセキュリティ問題とは、この連載でも以前取り上げました量子コンピュータの目覚ましい進化です。

★ 量子コンピュータとは

量子コンピュータは、物質を構成する原子や電子などの「量子」が持つ性質を利用して情報処理を行うコンピュータで、量子は「重ね合わせ」という現象が起きます。重ね合わせとは0と1を同時に表せる現象で通常のコンピュータではできない並列計算ができるコンピュータのことです。

★ 量子コンピュータの登場でどうなるか

現在主流のパスワード技術は素数という数字の組み合わせ技術を使用しています。中学校で習う素因数分解、実はスーパーコンピュータを含む従来のコンピュータは桁の大きな素因数分解ができないのです。コンピュータなのに計算ができない。ちょっとおかしな話ですが、その弱点をついて素数の暗号技術が利用されており、現在は、RSA暗号というものが主流となっています。

この弱点を簡単に解いてしまうのが現在開発が本格化されている量子コンピュータになります。この量子コンピュータが実用化されるのは2030年頃と予想されている中、昨年12月に中国の国立研究所などから構成される研究チームが現状の量子コンピュータでこのRSA暗号を解読できるという驚くべき論文を発表しました。

これが事実となると、ネットワーク上で暗号化された通信がすべて解かれてしまうことになり、大問題となります。論文をみた専門家たちの意見としては、論文自体は間違ってはいないという見解のようです。

つまり、理論上はできるが、大規模ネットワーク上でこれが可能かは実証できないのではないか、というのが本音のところです。

実用性はまだ欠くとのことで安心ですが、ただこの論文が出たことで量子コンピュータの開発がさらに本格化しRSA暗号を解読されるのが想定より早まることが予測されます。国家の機密情報にかかわる問題のため国家レベルでの開発がさらに活発になるでしょう。

★ 量子コンピュータの実用化が現実味を帯びてきた中で求められる量子耐性

量子コンピュータの実用化で大きく影響を受ける分野が下記の分野とされています。

⒈ 医療

ゲノム解析や創薬開発が進み、がん治療などがさらに高度化されていくことが予想されています。

⒉ 金融

金融についてはより正確な金融シミュレーションが可能になるとされています。現在実用化されているものとしては不良債権処理に必要な計算を短縮しているものがあります。

⒊ セキュリティ

この分野が一番影響を受けるため、開発が進んでいます。「ポスト量子暗号」という量子暗号技術が現在、開発されています。目には目をというように量子コンピュータでも解けない問題を作る研究です。これが確立されれば、この量子コンピュータによる暗号解読も防ぐことができ、早く確立されることが望まれる状況です。現在、日本では東芝やNECが開発しており、東芝の量子暗号技術の特許数は世界一で、量子暗号技術において日本はトップクラスにあります。ただ、中国も国家を挙げてこの量子暗号技術に取り組んでおり2025年までに量子暗号通信ネットワークを全土に引く計画を立てているようです。

⒋ ブロックチェーン

ブロックチェーン技術もこの量子コンピュータにより暗号解読されてしまい破られてしまうのが現状です。そのためブロックチェーンの基盤になる台帳に量子耐性を備えた「量子耐性台帳」という技術が開発され始めています。

以上のように様々な分野で注目される量子コンピュータですが、やはり量子コンピュータによる暗号解読が先か、その解読を止める量子暗号技術が先かで状況は大きく変わってくると思われます。量子暗号技術は東芝が特許技術を大量に保有することからも実用性が確立されてきており量子コンピュータによる暗号解読が先に起きてしまう可能性は考えにくいですが、金融から機密情報まで様々な分野に影響を及ぼす技術であり、あらゆる分野の業務上で必ず影響が出てくるといっても過言ではないでしょう。5〜6年もしないうちに、量子暗号対応をしていないネットワークが不正アクセスを受けるというような事件が起きる可能性もあり、個人情報や金融資産を守るためにも、今後も注目すべき分野です。

以上9回にわたりブロックチェーン技術の実用性を金融分野を中心に書かせていただきました。インターネットに匹敵する発明といわれるブロックチェーン、そしてスーパーコンピュータの演算能力を超える量子コンピュータがもたらす様々な分野の技術進歩の実現が10年にも満たない期間の間に起ころうとしています。

奇しくも2022年後半から始まった米国企業を中心にリセッション(景気後退)が確実視される中、ブロックチェーンや量子コンピュータの技術が実用化の目処が立ちつつある、これらの技術が景気回復の兆しの起爆剤になればと願っています。

今回をもちましてブロックチェーンの小連載は終了とさせていただきます。

《参考文献》

『[FT]中国研究者、量子コンピューターで「暗号解読」主張』2023年1月6日付 日経速報ニュース
『量子暗号通信って、なに?』NHKニュース

※ 本記事に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも記事の内容として記載したものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。

 



 

 

 

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