おひとりさまをサポートするしくみ

クローバー通信 No.210

一人暮らしの事情は人それぞれですが、現在家族と暮らしていても、誰もがおひとりさまになる可能性はあります。

今回は、おひとりさまの不安を取り除くための様々なサポートについて見ていきましょう。

1 おひとりさまの実態

65歳以上の一人暮らしは男女とも増加傾向にあり、令和2年の総務省国勢調査では、男性では、6.6人に1人、女性では5人に1人がおひとりさまとなっています。

高齢であるほど、女性は経済的不安が強く、男性は経済的不安に加え、社会からの孤立、生活能力の無さが問題となり、健康を害すこともあります。

2 困りごとの内訳

日常生活支援

・緊急時の親族への連絡
・買い物の手伝い
・通院への付き添い
・送迎
・見守り など

実施者・相談先(行政)

地域包括支援センター
(介護保険サービス)
社会福祉法人

身元保証

・緊急時の連絡先
・入院手続や連帯保証
・治療や介護方針の確認や同意
・退院・退所支援

契約・財産管理

・認知症などで判断能力が低下した場合の契約サポート
・生活費の引出し
・居宅の修繕など不動産管理

実施者・相談先(一般事業者)

高齢者サポートサービス事業者
司法書士
信託銀行 など

死後事務

お金

・死亡時の遺体・遺品の引き取り
・葬儀・埋葬に関する事務や費用支払い
・関係者・行政官庁・勤務先等への連絡・届出(年金・健康保険)
・未払い医療費や老人ホームなど、施設利用料の精算
・運転免許証・パスポート・クレジットカード等利用停止・清算
・公共料金の停止・清算
・賃貸物件の明け渡し、残存家具や遺品の整理
・墓石の建立、永代供養
・PC、携帯、デジタル遺品のアカウント削除など
・ペットの引き渡し

3 支援サービスの窓口と利用の注意点

地域包括支援センター

高齢者の暮らしをサポートするための施設です。介護や介護予防のための福祉保健サービスの他、介護保険の申請や、日常の困りごとを相談できます。すぐに介護の必要はない場合でもどんなサービスが受けられるか確認しておくと良いでしょう。

高齢者サポートサービス事業提供者

主に身元保証、死後事務を支援しており、弁護士や司法書士と連携している事業者もあります。サービス内容や契約方法、料金は様々です。

信託銀行・保険会社

財産の管理や残し方を相談し、金銭信託・生命保険の付随サービスとして、任意後見・死後事務委任など士業と提携して行う金融機関があります。

チェックポイント

⒈  要望の整理:何をしてほしいか、明確にする

⒉  サービス内容の確認:どんなサービスが受けられるか、適用期間など

⒊  支払い能力の見極め:使う期間と費用を想定して試算してみる

高齢者サポートサービスの提供事業者以外にも、地域によっては自治体や社会福祉協議会などで支援を提供している場合があります。

4 任意後見制度の活用〈生前に有効〉

高齢化社会が進む中、80代前半で4人に1人、80代後半では3人に1人が認知症を有しています。明らかに判断能力がないと判定されると、預貯金の引出しや、契約行為ができなくなります。それに備えるためには、任意後見制度が有効です。

◆ 任意後見制度とは

自分で判断できる間に、認知症や障害のリスクに備えて、自らが選んだ人(任意後見人)に、代わりにしてもらいたいことを契約(任意後見契約)で決めておく制度です。

不動産や預貯金など財産の管理と介護や生活面の手配などを委任することができ、公証人の作成する公正証書によって契約を結びます。

本人の判断能力が衰えてきたら、任意後見受任者や四親等以内の親族が家庭裁判所に申立てをし、任意後見監督人が選任されて初めて任意後見契約の効力が生じ、死亡すると契約が終了します。

5 死後事務委任契約

死後事務委任契約とは、死後に行わなければならない事務や整理を、生前に第三者に依頼する契約です。

代理人は特に資格は必要ないので、友人や知人に依頼することも可能ですが、死亡後の手続きは多く、煩雑です。

また本来は親族が行う手続きの為、行政など窓口の対応も慎重になります。手続きに慣れている専門家(相続診断士・弁護士・司法書士など)に依頼すると良いでしょう。契約書に関しては公正証書を作成すると安心です。

6 遺言書

遺言書は、本人の最終意思を尊重する制度であり、遺産を誰にどのように配分するかを自由に定めることができます。遺言書がない場合は、民法の定めに従って相続人に配分されます。

※法定相続人には遺留分という権利があり、これを侵害する部分については、後に紛争の種となる可能性がありますので注意が必要です。

また、遺言執行は、本人の意思に従った財産の承継をおこなうことを目的としており、死後事務委任の強制力はありません。

7 生命保険信託の活用

生命保険信託とは、生命保険金を、保険金の「受取人」「受け取り方」を指定し、保険金の請求や支払いを信託銀行に託すしくみとなっています。

受益者(受取人)は家族や親族に限定されないため、事実婚の配偶者や子ども、ペットの世話人などに残すことができます。複数の受益者を設定できるので、第一受益者が亡くなったとしても残りの保険金は第二、第三の受益者を指定しておくことができます(遺言ではできない連続受益)。

残された人が自分で管理できない場合、悪意のある親族に使われてしまう可能性もありますが、保険金を法人(信託銀行)が管理することによって使い込みなどのリスクがありません。

普通の生命保険では、支払われた保険金の使い方を指定することはできません。おひとりさまだけでなく、配偶者や子どもに障害がある場合、ペットの為にお金を残したい場合などは、生命保険信託を検討してはいかがでしょうか。

まとめ

誰もがおひとりさまになる可能性はあります。亡くなった後の手続きの中で、各自治体が行うのは、自治体ごとのルールに従って火葬を行い、自治体が提携する寺院などの合同墓地に納骨を行うだけというケースがほとんどです。相続人がいない財産は最終的に国のものになります。

もしもの時に誰でもわかるように、契約しているサービスの内容や連絡先を、わかりやすいところに掲示しておきましょう。

遺言書の作成と遺言執行者の指定に加えて、任意後見、死後事務委任を合わせて契約しておくと安心ですが、自分にとって何が必要か、まずは考えてみましょう。

 

 

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