第55回 ブロックチェーンゲームで小学生が月2万円稼ぐ時代が到来❼

情報セキュリティ連載
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5 大手企業がメタバースに参入する狙い

前回はWeb3は実現するか?というお話をしました。想定される答えとして、Web2がWeb3化されたインターネットの世界が構築されていくというのが答えでした。

今回は、Web2のWeb3化はいつ起こるかという問題についてお話したいと思います。経済の話がメインとなります。というのもIT技術が社会浸透するのは、その時の経済状況で大きく変化するためです。

★ Facebookの収益構造が変わるきっかけ

ハーバード大学の学生マッチングツールとして始まったFacebookはiPhoneをはじめとするスマートフォンから個人の検索、行動履歴の情報を収集できるようになりました。スマートフォンの普及に伴い、ユーザー数は爆発的に伸びていきFacebookには大量の個人情報が集まるようになりました。この情報を元に個人に合ったデジタル広告業を展開し大きな収益構造を作り上げていきます。このように個人の検索、行動をはじめ生年月日などの詳細な個人情報が1企業に集中するようになると、EUをはじめとする国家間レベルで危惧されるようになります。

Facebookの個人情報の流出事件をきっかけに、IT企業へのユーザーの不信感も高まるようになりました。結果として米Apple社は、iPhoneから提供される個人情報を、Facebookなどの第三者への提供を停止する機能を発表、Googleも追随する形で個人情報の収集について方針変更を迫られる状況になりました。この時期を起点にFacebookは収益構造の大転換を迫られます。

★ IT企業へ新型コロナがさらに追い打ちをかける

IT企業が収益構造の転換を迫られる中、新型コロナを起源とする経済活動の抑制により様々な企業が思うような活動ができなくなります。新型コロナを起因とするインフレ原因は、個人の消費行動が「人と触れる消費行動」から「人とは触れない消費行動」へ変わったことが主な要因とされます。例として、外食を控え、家でいつもより良いものを食べたり消費したりする行動です。新型コロナがまたたく間に世界中に広まり、人と触れない消費行動がさらに加速しました。外食産業、それにかかわる業種の労働人口は強制的に減らされます。

このような状況が3年ほど続き、職を失う人が続出したため先進国の中央銀行は経済の停滞を防ぐため巨額の財政出動をします。額にして1600兆円、日本政府の1年の国家予算22年分に相当する財政出動をしたのです。巨額の財政出動をした中央銀行は経済活動が戻れば財政出動に用した資金もすぐに回収することができると読んでいました。

ところが、労働市場に人が戻ってこないという予想外の現象が生じてしまい、労働不足を起因とするインフレが発生し始めます。このインフレは経済に暗い影を落とします。インフレ率は8%台となり、安定とされる2%の4倍ものインフレの状況となり、FRBは金利を4%台まで急速に上げ経済活動にブレーキをかけました。結果、再開された企業活動はまた強制的に抑制されました。経済活動を加速したり、ブレーキをかけたりするため、必然的に経済は悪化します。米国ではやはり上記のように業績が悪くなり従業員の解雇などが起こり始めています。Facebookは1万1千人の労働者解雇、Googleも新規採用を中止、Amazonも新規領域の投資を停止との発表をしました。

2001年に起きたITバブル崩壊ではマイクロソフトやGoogleは巨額の投資はしておらず、それがITバブル崩壊で安定した成長を続けられたとされています。ところが、今回はFacebookもTwitter社も大幅な人員増加や、新規事業へ投資をしてしまったとしており、IT企業が苦境に陥る兆しが出始めています。

★ Web3の実現性について

上記のようにIT業界の経済状況が良くないことから、今後数年間は画期的なイノベーションが生まれるかが不透明と言われています。

ただ、GAFAM一強時代のままではWeb3のような技術はGAFAMに良い形で利用されていたと思いますが、数年間起こる経済不況が、違う形でのWeb3を形成するかもしれません。

日本でもWeb3を事業として開拓しようという動きがあり、2022年11月8日NTTドコモが「Web3へ6000億円の投資を表明」という発表がありました。具体的内容は明確なものはありません。ただ企業もこのIT業界の現状を踏まえ、次のプラットフォームのチャンスを伺う動きが出始めるのは確かなようです。

「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」というアメリカの著名投資家・ジョン・テンプルトン氏の有名な言葉があります。この言葉は株などの投資で本来用いられる言葉ですが、今、経済は悲観の方向へ向かっています。恐らく、NTTドコモへは懐疑的な見方が強まると思われますが、この中でNTTドコモのように6年という長期的な目線でのWeb3の参入は戦略的に間違っていないように思います。

次回はNTTドコモと同様な取り組みをしている企業を取り上げたいと思います。

《参考文献》

・『ドコモ、Web3「日本発で」 次世代ネットに6000億円 アクセンチュアなどと基盤』
  2022年11月9日付 日本経済新聞
・『米ITトップらから相次ぐ謝罪の言葉』
・『アマゾン利益率低下、投機的事業の余地なし』
  2022年11月11日付 ウォール・ストリート・ジャーナル

※ 本記事に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも記事の内容として記載したものであり、その銘柄又は企業の株式等の売買を推奨するものではありません。

 



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