「日常」の脆さ

タイトルの由来

会長

『「日常」の脆さ』の由来は、たまたま目にした日本経済新聞3月18日付のコラム「春秋」記事から頂いた。

2月24日ロシアがウクライナへ侵攻して一カ月が経ち400万人を超えるウクライナの人々が難民として隣接するポーランドなどの国々を経由して西欧諸国へ逃れているのを見聞きして、平和な日本の一員として、日本の平穏な日常をありがたく感じていたところである。

日常と非日常は紙一重

前述の春秋の筆者も「じつは脱線の6時間ほど前に、取材先から帰京するために新幹線のこの区間を通ったばかりだった。」とのことで『やはり「日常」は脆く、すぐ隣に「非常」が待ち構えているのだと思い知る。』と書いている。(※)

数年前に中央高速の笹子トンネル崩落事故があった。わたくしも月に一度必ず通っていたところでもある。崩落事故で亡くなられた方や、通過直後に崩落があったため間一髪事故を免れた人もあった。日常と非日常は紙一重であって、これを分けるものは神のみぞ知る、である。

今度の新幹線の脱線事故にしろ、トンネル崩落事故にしろ、あるいは千葉で起きた台風による停電事故などインフラによる障害は社会の多くの人に影響を及ぼす。

アクシデントの予知

自然災害やインフラの劣化によるアクシデントの予知は進んでいるとはいえ、まだまだ、その時は「運」に任されることが多い。しかし、人の営みによる厄災は、「合成の誤謬」ではないが、良かれと思って行っていることが、結果として想定外の結果や厄災をもたらしてしまうように、分かっていても避けられないようだ。

中国の習近平政権が誕生して以来、中国の世界制覇への野心が現実化し、アメリカの民主主義と中国の独裁主義の対立が鮮明となり、世界の経済環境もグローバル経済からブロック経済へ移行する兆しが出てきた。そこへプーチン大統領のウクライナ侵攻があり、グローバル経済体制は完全に消滅した。

これからは、自由主義経済圏と独裁全体主義経済圏と二極化してゆくことがはっきりしてきたと思う。

ロシアに厳しい経済制裁を課しており、その反作用としてどうブーメランのごとく我々に跳ね返ってくるか予想もつかない、何が起きてもおかしくない時代に入ったのである。

アフターコロナの経済正常化へ向けて、FRBが利上げを開始したが、相前後して世界各国が利上げを発表する中で、日本銀行は利上げに追従できず、3月28日、「複数日にまたがって国債を決まった利回りで無制限に買い入れる『連続指値オペ(公開買い付け操作)を実施する』と発表した」。その結果、対ドル円相場は125円まで急激に売られた。円安の行方について専門家は「夏にも135円突入も」という意見が出てきている(4月2日付)のである。

思い起こす「暗黒の水曜日」

日銀の『連続指値オペ(公開買い付け操作)を実施する』との発表で思い出すのは1992年9月に起きたイギリス・ポンドの暴落によりイギリスがERM(欧州為替相場メカニズム)から離脱した事件である。ジョージ・ソロス氏は1992年9月16日イギリス・ポンドを暴落させた。

世界基軸通貨であったイギリスのポンドは第二次大戦後はヨーロッパではユーロの前身となるEMS(欧州通貨制度)とERMを形成していて、イギリスも加入していた。しかし、ドイツを中心とするERM内の制約に縛られて、国内の実情に合わせた政策をとることができなかった。

そこで実勢と乖離したポンドに投機を仕掛けてポンドを売り崩し、イギリスはERMから離脱を余儀なくされジョージ・ソロス氏を一躍有名にした事件である。

密かに円を狙っている

FRBの利上げに伴い、あるいはそれに先行して世界各国が利上げを行っている中で、日本だけは金利を据え置き、無制限に国債を買い入れる政策、このような硬直的な政策をとらざるを得ない日本は、かってのイギリス・ポンド売りの前夜を想起させるのである。

ブロック経済化は資源の乏しい日本にとって厳しい経済環境をもたらす。現に石油や天然ガスなどのエネルギー資源や、中国マーケットからの離脱は日本の経常収支を悪化させ力を削ぐことになろう。

「弱り目に祟り目」という諺があるが、ハゲタカのような人々が密かに日本を狙って、日本に降りかかる試練を好機と捉えてさらなる円売り圧力をかけてくる恐れなしとしない。一瞬にして潰れたイギリスのポンドのように。

※3月16日に発生した地震により東北新幹線では脱線が起きた。

 

 

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代表 小川 湧三

 

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