第45回 AIの現状について

情報セキュリティ連載
第45回 AIの現状について

今回はウォール・ストリート・ジャーナル(以下WSJ)のテクノロジーニュースレター『AIがそれほど賢くないのはなぜ?』(2021年8月3日付)を元に人工知能(以下AI)の現状について検証したいと思います。

1 記事の内容

人工知能の研究者の間では現在開発されているAIに生物学的な「知能」が一切ない、という結論に達するケースが目立ちはじめているとのこと。

これらの事例を受けマサチューセッツ工科大学の経済学者ダロン・アセモグル氏は「AIはやや誤った名称だと思う」としています。

AIのイメージは人間の脳を模したものであり、多くの領域帯で人間の能力を超越し何百万人もの労働者の仕事を奪うというものでした。

しかしながら、完全自動運転技術はまだ実現に至らず自動運転を開発するウェイモ(米国Google社の自動運転開発部門)は今年、自立運転という文言を削除、米国テスラ社も高性能な自動運転支援システムを提供していますが、今だ自立では危ない状況も多くあり、完全自動運転には至っていません。

米国IBM社が提供する人工知能「ワトソン」のプロジェクトも多くが成功していない状況です。

2 AIはブームだったのか?

ではAIはブームだったのでしょうか。

2021年に投資されたAI関連の投資額が約4兆1400億円を超えており、昨年の2倍もの投資が行われている状況です。

またGAFAはAI技術を駆使してより収益力を増しています。「世界の富のピラミッド」において世界の1%の成人人口が富の46%を独占しており、この中にGAFAのようなIT企業のトップが名を連ねています。この状況は10年ほぼ顔ぶれは変わっていません。

このことからもAIは確実に収益構造を確立しており、ブームというわけではないようです。

3 富を独占する要因はやはりAI

GAFAの1つフェイスブック社はユーザーの投稿内容から、またGoogle社もユーザーの検索履歴から個々のユーザーの趣向性を把握、精度の高いターゲティング広告につなげ売上を伸ばし、企業の時価総額も上げています。

この収益モデルはAIを用いることで可能にしています。

ワトソンや自動運転では失敗しているAIでも、フェイスブックやGoogleは同じAIを使い業績を伸ばしています。

ここから見えてくるのは、AIは自動運転のような様々な状況から予測、判断をこなすことは苦手であるが、ある特化した分野において予測、判断することが得意です。

AIが人間の脳を超すというイメージをもたらしたため、様々なことが出来てしまうと期待を膨らます結果となりましたが、実はAIは「特定の分野において大量のデータを収集、学習して人間より高度な予測、精度の高い分析ができる」ソフトウェアの1つです。

4 AIと従来のソフトウェアの相違点

AIが、従来のソフトウェアと異なるのは機械学習といわれる、いわば自己学習により予測などの精度が急速に伸びるという点です。AIの特徴である自己学習はスタートとゴールを設定し中間に使う材料を大量に仕込むと判断、予測の精度を上げられます。材料さえあれば24時間365日学習し続けられ、驚異的な成長を遂げることができるのが最大の相違点です。

この自己学習が人工知能と呼ばれる所以であり、誤解を招く要因になっています。

5 AIが成長している分野

AIが得意とする分野は答えが明確なもの、パターン化されたものです。

例えば、文字認識において、「あ」というゴール(答え)に対して、Aさんが書く「あ」Bさんが書く「あ」…というように様々な「あ」を大量に学習させることで文字認識の精度を上げられるのです。

文字認識や画像認識、音声認識などの分野に強く、データ入力分野で大きな成果を上げています。入力資料の多い保険業界では業務効率を大幅に改善しています。

6 業務にAI導入を

WSJの記事が示すようにAIが全ての業務を奪うことはなく、むしろAIを業務に上手く融合させた企業が生き残っていくと思います。

GoogleはAPI連携の技術ですが文字認識、音声認識のツールを非常に安価で提供していますし、ソニーも無償でAI売上予測などのサービスを展開しています。

またGoogleのAIアシスタントはiPhone、Androidのスマートフォンで利用できます。「おはよう」などのキーワードで話しかければ、その日の予定や天候、職場までの交通状況、設定したルーティン(音楽アプリの起動など)をこなしてくれます。

まとめ

このように、AIは普段の生活の中に浸透しはじめています。労働人口は2030年までに640万人減ると予測されています。業務に合わせて、AIを導入することがこの労働人口減対策に大きな役割を担うと思います。まずは身近なGoogleアシスタントなどの利用からAI慣れをしてみてはいかがでしょうか。

《参考文献》
『AIがそれほど賢くないのはなぜ?』2021年8月3日付 ウォール・ストリート・ジャーナル

 

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