税の使いみち

令和2年度予算

12月20日令和2年度の政府予算案が発表された。一般会計の総額が100兆円を超える予算案は2年連続である。税収の見積もりは63兆円で、税外収入もあるが、不足額は国債を発行して賄うことになる。

日本の財政赤字による政府債務残高は平成9年に終戦直後の対GDP比214%をこえ昨年3月末には237.5%まで膨らんできた。世界の経済学者たちから「日本の財政はいつ破綻してもおかしくはない。破綻するかどうかではなくいつ破綻するかである」と言われている。

しかし、日本の政府は日本国債の格付けを引き下げた格付け会社に対して「日米など先進諸国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」として、国債の格付け引き下げに対して反論している。

赤字財政を擁護する新理論

おりしも、昨年春以来ステファニー・ケルトン教授の「MMT(現代貨幣理論)」が紹介され、財政赤字を容認する最強理論として議論を巻き起こしている。

また、つい最近このMMT理論を積極的に採用すべし、とする藤井聡京都大学教授が「MMTによる令和「新」経済論」を出版した。

また、数年前には「ベーシック・インカム論」あるいは「グローバル・ベーシック・インカム論」「シムズ理論」などが発表され、現代の資本主義社会における格差社会(1%の富裕層が99%の人々の富を所有する)の是正策として国民一人一人に条件を付けず一定の所得相当額を現金で支給するという案も提案されたこともある。

わたくしにはMMTは「暴落の前に天才がいる」とジョン・K・ガルブレイス氏が言うように異常現象の前兆のように思えるのである。

令和2年度予算、赤字の中身

予算案の支出の中心は社会保障費で予算の40%を占める。政府は令和2年度から「全世代型社会保障」を打ち出し、今年度からは高齢者に偏っていた社会保障を幼児から高齢者までの全世代保証型社会保障政策へ舵を切り、幼児教育・保育の無償化のほか高等教育の無償化も含まれ、子育て分野も過去最大の額に膨らんでいる。

一方、年末年始にかけて人口問題について気になる記事が報道されていた。
1つ目は、12月25日、令和元年の出生数86万4千人と戦後最低を記録し、2年前の国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計値よりも2年早く86万人台になってしまった。

2つ目は今年の新成人は男性63万人、女性59万人、合計数122万人で戦後最高であった昭和45年の246万人の半数を割り込んだ。平成2年の188万人と比べても60万人減少してしまっているのである。50年で2分の1、30年で3分の2に出生数が減少しているのである。

出生児を権利の主体へ

今年生まれた人が社会に出てくるのは20年後である。人口政策は20年~50年のスパンで考えなければならないことだと思っている。

さらに重要なことは、数の減少ばかりでなく、質の劣化が著しく進んでいることである。

笹川陽平氏が1月10日の産経新聞に寄稿されているように「核家族化や少子高齢化、地域社会の崩壊が進み、子供を『社会の宝』として地域全体で見守り、育てる日本の伝統文化が急速に薄れてきた現実がある」と述べて、質の劣化を憂えておられる。

さらに、幼児・子供は「保護の対象ではなく権利の主体」とすべきであるとして、「子供に対する大人社会の目線を『保護の対象』から『権利を持つ主体』に切り替え、子供が発するSOSに社会全体がもっと敏感になる必要がある」と述べて、意識の転換を訴えておられる。

人口政策と税の使いみち

権利の主体として子供に焦点を当てるなら、子供の成育にかかる費用に焦点を当てるのではなく、生まれてくる子供の生存権に焦点をあてることである。

子供が生まれたら、国が生まれてくる子供の生存権を保証するという考えで、子供を育てる親にではなく、成人するまで、生まれてくる子供に生存・成育受給権として一定額を与える。親は信託的に子供の成育の費用を管理することにしてはどうであろうか。

例えば、出生時に成人まで1人に月額5万円の受給権を与える。子供を取り巻く問題はあまりにも多様で奥深いので、個別政策ではなく包括的に対応できるようすることが本当の全世代型社会保障といえると思うのである。

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三

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