伴走型事業承継

人生100年時代の事業承継

人生100歳時代といわれているが、私も「100歳現役を目指す」と言っているいま、多くの経営者の方々にも同じことを言っている。

会長

かつて、事業承継と対で云われる「ハッピーリタイアメント」:現役を引退して第二の人生の道を歩むこととは異なり現役の道まっしぐらの人生を歩んでいる。

定年退職とか、大会社のように役員改選、大病をするというようなエポックメーキング的な事でもない限り中小企業の経営者は現在の仕事から離れて自ら第二の人生を歩むことはなかなか難しい選択である。

このような現状を直視しながら改めて「人生100歳時代」の事業承継を見直してみたい。

事業承継元年から10年

ほっとタイムス2008年6月号(111号)「2008年は中小企業の事業承継元年」という記事を書いてから10年を経過した。その後5~6回事業承継を取り上げてきた。

最初に取り上げた「2008年は中小企業の事業承継元年」ではサブタイトルで
◉中小企業承継問題は構造的なもの
◉新たなチャンスの到来
として新たな創業型事業承継の可能性を指摘した。

事業承継に対する私の見方はこの当時と全く変わっていない。構造問題であるからこそ、年々状況が悪化してきて、いよいよ2025年までに127万社(中小企業の3割)が後継者未定で廃業の危機に陥る事態になっているのである。

事業承継問題における核心

事業承継問題における核心は何か。それは二つあり、その一つは創業者(現経営者)と親族内後継者の年齢ギャップであり、もう一つは2018年4月号(229号)で書いた通り大創業時代に起業した創業者の人たちの多くは起業の苦労を後継者予備軍である自分たちの子供に味わせたくないと積極的な後継者育成を行ってこなかったのである。

第一の年齢ギャップについてみると、後継者が大学を卒業しても創業者である親は50代、後継者の適齢期30代になっても親の年齢は60代が一般的であろう。この世代では中堅企業ならいざしらず中小企業では現経営者が経営の先頭に立っているのが実情であり、後継者がいても創業者(現経営者)が元気なために権限の委譲がスムーズにいかなくて、形式的な事業承継は出来ても実質的な事業承継はうまくいかなかったのが昭和から平成にかけての事業承継の課題であった。

従業員承継においても第三者承継にしても課題が多い。私のお客さまの中にも、社内後継予定者を社長にしたところ数年後に取引先を引き抜いて別会社を作って独立してしまい、ハッピーリタイアメントとは程遠い結末を迎えてしまった例もある。

伴走型ともいえる後継者を招聘したが、番頭としての能力を発揮しきれずに挫折してしまった例もある。

伴走型事業承継

日本は世界一長寿企業が多いと云われているが、企業の長寿を支えてきたのは実力のある者を経営に据える養子制度、番頭制度とハッピーリタイアメントを保証する隠居制度だと思っている。私はこれを資本と経営の分離もある「伴走型事業承継」あるいは「リレー型事業承継」と名付けているが、事業承継における世代間ギャップを埋めるためには、当時の養子制度、番頭制度、隠居制度を現代的にアレンジした伴走型事業承継システムを構築すべきではないかと考えている。
幸い、2月27日の日本経済新聞が中小企業へファンド資金と起業希望者を紹介・橋渡しをする企業が現れたことを紹介していた。

出資をしながら人材を派遣しタイミングを見て事業を引き継ぐというような趣旨である。

かわさき事業承継市場に望む

2017年12月12日に「KAWASAKI事業承継市場」ができてから2年目に入った。

その設立主旨には「川崎市内の中小企業者の円滑な事業承継支援に取り組むために必要な施策等を展開、事業承継に伴うあらゆる経営課題に対応しうる〝よろず相談窓口〟を目指している」とある。

しかし、私はさらに一歩踏み込んで地域に根ざしたこのような公的機関ならではの取り組みとして、今までの紹介・斡旋・成立で「ハイ終わり」ではなく、伴走型事業承継の担い手として新たな創業のチャンスを求めている人材等の養成と登録、さらには事業承継の目的の終了までをコミットする伴走型事業承継モデル作りと実現とフォローをお願いしたいと思う。

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三

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