第三者承継

総合支援パッケージ発表

会長

タイトルは中小企業庁が昨年12月20日に発表した「第三者承継支援総合パッケージ」からとったものである。2月2日の産経新聞日曜経済講座に『中小企業の廃業を阻止せよ:政府が「第三者承継」を支援』の記事が掲載されていた。わたくしが昨年4月号のほっとタイムス「伴走型事業承継」というタイトルで書いていたので目に留まった。

わたくしは事業承継については以前から中小企業大学校や創業塾・起業塾などで起業者の育成を通じて第三者の事業承継者を育てるのが先決ではないかと考えていたので、記事のタイトルの「第三者承継」の文字に我が意を得た思いであった。

第三者承継の課題

第三者承継(伴走型事業承継)の課題は大きく4つに分けることができる。

1つ目は、記事に「第三者承継には大きな課題がある」と書いてある通り創業者のライフプランである。

2つ目は事業後継者のインセンティブプラン。

3つ目は中小企業につきものの資金に関する課題。

4つ目は創業者と事業後継者との契約ルール作りである。

3つ目の資金に関する課題については「支援総合パッケージ」の中でも保証制度の改善や、投資ファンドによる後継者支援スキームが提案されているので割愛することとする。

伴走型事業承継の課題

今まで全く取り上げられてこなかったのが第4の「第三者承継」に伴う当事者双方のルールづくりとそれを取り巻く見守り機能である。

かつて、わたくしのお客さまで起きたことであるが、事業承継すべく幹部社員を社長にしたところ幹部社員が数年後に新しい会社を立ち上げ取引先をその会社に移してしまった。

お客さまはすべてを失ってしまったのである。会社の成長を見守りながらご自分の老後の生活なども考え、ささやかな報酬を期待して老後の穏やかな生活を夢見ていたのであるが、無残にも裏切られてしまった。

第三者が事業承継者として伴走を始めるにあたってのルール作りとその後を見守るフォローアップの仕組みづくりが欠かせない。

原因は双方にあると思っているが、前述の事例のように不幸な結果にならないようにするためにも仕組み作りが必要ではないかと感じている。その役割を「第三者承継支援総合パッケージ」の中に「第三者承継のガイドライン」として示してほしいと願うものである。

後継者へのインセンティブ

一方、事業承継者にとっては後継者としての苦労に報いる報酬体系を求められるし、事業承継が成功し完成したときのインセンティブ報酬体系も見える化する必要がある。

株式の取得・移転や、ストック・オプションの付与など後継者のインセンティブ・プランについても、今は体系的に作られているものはないように思う。

後継者にとって、自分のライフプランを描くにあたって一番関心の高いことであろう。うまくいった場合、並みの成果だった場合、やむなく撤退しなければならない場合、いろいろなケースについて身の振り方が明らかになっていることが事業承継にチャレンジしやすくなる。

第三者承継の後継者にとっては、一から事業を立ち上げるよりも、出来上がっている事業からのチャレンジで、経営資源が見えているところからの出発でありリスクの予見がしやすい点が大きなメリットになると感じている。

創業者のライフプラン

中小企業の経営者が事業承継を考え始めるのは65〜70歳ころからが多いように見受けられる。65〜70歳といっても人生100年時代では残り30年あると思わなければならない。

第三者承継に限らず事業承継に最も重要なファクターは創業者のライフプランをどのように設計するか、思い描くかに大きくかかってくる。

記事にあるように「自社を第三者に譲渡せざるを得なくなった中小企業の経営者の複雑な心情だ。『一国一城の主』として長年、心血を注いできた会社、事業を他社に売り渡すのは忍び難い」経営者のそんな思いに寄り添うことが第三者承継の最重要な課題である。

後継者と伴走して役員報酬の形でライフプランを作るか。また、退職金や株式の譲渡代金として一時金を手にするライフプランを設計するか。

わたくしの提案した事例では、職人気質の創業者に創業者退職金を支払い、工場の中に研究開発会社を設立し製造工程に影響しないように機械設備を一部移して研究室を作ったことがある。

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三

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