事業承継

205_会長_opt中小企業は国の宝

手元にある資料によれば西暦1700年以前に設立された世界の企業1000社の内約三分の二は日本の企業である。また最も古い企業12社の内日本の企業は3社あり、そのうち一番と二番が日本企業である。かつて金剛組が最古の企業といわれていたがこのリストからはのぞかれている。

企業数の99・7%、雇用者数では約70%が中小企業が占めて中小企業は社会の中核をなしているのである。租税国家となった先進国社会ではどの国も国家財政の中核を担っているのは中間層であって、その中間層の中核が自営業者を含む中小企業経営者が占めているのである。

長寿企業はなぜ日本に多い

長寿企業が日本に多いのは家族を中心とする「家」制度を維持するための仕組みとして血縁のない実力のある者が家業を継承できるように養子制度があったからだと云われている。実力のあるものが家の事業と家族を引き継いでいく制度は世界に類のない制度である。

家族を中心とすることは世界各国に見られるし、中国やイスラム圏では家族中心で家族のネットワークの中でワールドワイドなビジネスを展開している。

だが血縁のないものを「家族」として扱うことがなく「養子」という考え方はないようである。

養子という制度は血縁以外の中から実力のある人物を見極め後継者として家業としての企業を引き継がせるもので、私たちは歴史小説や名家の系譜でおなじみのことだと思う。

中小企業を巡る課題

いま、格差問題が世界的に取り上げられているように、格差問題の中心は中間層が貧困層へ落ちてゆく中間層の剥離が問題として取り上げられている。

中間層の中心にある事業経営者の事業承継問題でいつも取り上げられるのは後継者がいない後継者難である。これは一つは経済のグローバル化による産業構造の変化であり、もう一つは長寿化による人口構造の社会的な変化である。

産業構造の変化は第二次世界大戦の後は圧倒的に強かったアメリカの製造業がコスト、技術その他の面で西ドイツ、日本の台頭を受けて空洞化していったことがあげられる。

いまわれわれは西側先進諸国の共存体制から全世界のグローバル経済化によって中国をはじめとする開発途上国との競争にさらされて産業構造の転換を迫られている。

アメリカは大胆な産業構造の転換を行って金融事業やハイテク企業・IT企業の産業化に成功し、アップル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック等世界シェアを独占するような企業が続々と誕生している。

家族内の事業承継

家族単位で見れば子供たちが成長して職業選択時期を迎える時期にあっても事業経営者である親世代が元気一杯活躍していて、あるいは、経営規模的に後継者である子を受け入れる経済的基盤が成り立っていないために、他に職業を求めざるを得ない事例が多いことである。

さらに言えば高度成長期に在っては家業を継ぐよりも他に職業を求めたほうが家業を継いで受ける報酬よりも多い場合が出てきた。

あるいは、親世代は子供に事業を継がせることを考えながらも、むしろ自分たちの苦労の時代を子供たちに味わわせたくないと考えて、積極的に家業以外の職業選択を推奨してきた。

終戦直後から高度成長期における成り行き的な創業と、後継者を育成しようと意識するのとは逆に、自分たちの創業の苦労や経営に付きまとう不安定さを味わわせたくないという潜在的な幸福=安定願望から後継者育成を放棄してきた現実がある。

これからの事業承継

中小企業の事業承継はかつて家族承継が中心であったがもはや家族以外が主流になりつつある。

M&Aはかつては「会社を身売りする」あるいは「会社を乗っ取る」といったイメージが強かったが、今は違う。

企業経営者は自分の「ハッピーリタイアメント」のために、新しい創業者たちは企業の成長を「時間で買う」という意識が非常に強くなった。

M&Aは企業経営者にとって戦略的ツールとして認知される時代になったのである。

このように中小企業においても古来の原点に返って実力あるものに家業や経営を委ねられるように、自ら経営する企業を「ぴっかぴっか」な企業にしておくことが事業承継の早道になった。

 

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三


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