川崎市「中小企業活性化条例」

民間主導の中小企業憲章

ほっとタイムス205号_会長今日(4月1日)から川崎市「中小企業活性化条例」が施行される。

「中小企業活性化条例」の正式な名称は「川崎市中小企業活性化のための成長戦略に関する条例」という。この条例の画期的なところは当時他の政令指定都市にあって川崎市になかった〝中小企業に関する憲章〟を川崎商工会議所の山田長満会頭と新しく川崎市長となった福田紀彦市長が会談した際、商工会議所が主導して作成し市へ提案することとなったことから始まったと記憶している。

この条例はよくある官製の理念条例と違って民間が主導して制定された中小企業憲章の域を超えて市の政策に深くコミットしている実行条例になっている点に大きな意義があるものと思っている。

条例の要旨

条例の要旨は日本経済新聞(2月7日)に「中小企業の創業・経営革新支援」と題して報道されているので、引用させていただく。

「地域社会に密着したコミュニティビジネスを含めた創業支援のほか、大企業や大学が保有する知的財産の活用や新製品の共同開発など連携の促進、若者や女性に的を絞った就業支援に取り組む。都市間の産業支援で海外市場の開拓も支援する。公共事業では、次年度以降の財政支出を担保する債務負担行為を弾力的に活用する。」

と紹介されていた。

私は 「中小企業は国の宝、中小企業の繁栄は社会の活力」 だといつも思っている。新聞報道にもあるとおり中小企業は市内企業の99%超、従業者数の4分の3を占める。

しかし、バブル崩壊後はデフレに突入し中小企業数は減少する一方である。このような時期の中小企業活性化条例が制定されたことの意義は大きい。

ボローニャの産官学連携

中小企業の育成と活性化の参考になると思われる事例が『ボローニアの大実験:都市を作る市民力』(星野まりこ)という著書の中に紹介されていたので紹介したい。

ボローニャの企業数は人口37万人に対して3万8千社で人口10人に1社の割合を占める中小企業の街である。

この中小企業の街は「職人企業」の育成に焦点を絞り産官学の連携によって達成された。「職人企業」とは、大量生産に向かない専門業種を個人経営し製品を供給する企業のことを言い、日本にも馴染む考え方ではないかと思う。

ボローニャでは大企業の技術やノウハウを「職人企業」の特質を活かして中小企業に移転・育成する政策をとった。

具体例をあげれば、包装機械を例にとると、チョコレートやチーズ、固形スープの包装など食品業界の細やかなニーズに対応する小規模な職人企業へのスピンオフから始まりタバコ・薬品・おむつなど、業種も形態も多様な包装機械製造へと得意分野に特化した小企業が次々と増殖していった。

一つの会社から数十、時には百社を超える係累会社が生まれた。

また、海外進出に当たっては政策的に生産技術を国内に残し、営業・販売面に特化して海外進出を図る戦略をとった。この点は日本が産業空洞化によって中小企業が潰滅したのとは大いに異なる。

川崎を日本のシリコンバレーに

川崎市は戦後京浜工業地帯の中心として発達し、大企業や多くの下請企業の集積地として発達してきた。重化学工業の時代には公害問題で、電機工業の時代には国際競争の影響を受け、第一次、第二次、第三次と度重なる産業空洞化により、中小企業は減少の一途を辿ってきた。

産業空洞化に危機感を抱いた川崎市は、KSP(かながわサイエンスパーク)を皮切りにKBIC(かわさき新産業創造センター)、K2タウンキャンパス(新川崎タウンキャンパス)、最近はキングスカイフロント(殿町国際戦略拠点)を誘致・創設するなど産官学の連携を積極的に薦め産業の活性化に努力している。

川崎市は研究所や研究に従事する人材が政令指定都市の中では一番多いとも聞く。

川崎には京浜工業地帯の中核としてシリコンバレーのような新規企業が次々と生まれる素地はあるものと思っているが、決定的に欠けているものはシリコンバレーにおけるUCLAやボローニアにおけるボローニア大学のような物理・化学・生物など工業技術系の大学とそこで学ぶ学生・研究者などの裾野の人材の集積を図ることが残された課題ではないかと考えるものである。

税理士法人LRパートナーズ
代表社員 小川 湧三


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