長寿社会における相続…その問題点

長寿社会における老々相続の問題点

平成 25 年1月 24 日税制改正大綱が発表され、平成 27 年分から相続税の増税が決まった。

①基礎控 除を 40 %下げる。②税率も税率区分を引き下げたうえ3億円超・50 %から6億円超 55 %に引き上げる。

贈与税については①税 率の緩和と最高税率の引き上げ ②相続時精算課税制度、納税猶予制度の見直し、教育資金一括贈与制度の創出などである。

これを契機に新聞等でも相続の問題が沢山取り上げられているが、相続税を取り扱うものとして問題点をいくつか提起してみたい。

今年になって私の周辺で相続が8件あった。亡 くなられた方の最長年齢は106歳、直近では 95 歳、報道によれば 90 歳以上の生存率は4人に1人を超えたと報じられていた。

90歳を超える「老々相続」においては、相続人はその大半は定年を迎えてから相続することになる。

定年と言えば人生の生産活動を終え余生の階段の入り口に立っており、自らの資産形成も含めて本来的には生活設計が完了しているときである。金融庁も金融商品の販売に当たっては、高齢者にはリスク商品を販売しないように指導しており、「老々相続」により財産を相続しても、その財産を積極的に活かすことは難しいのである。

長寿社会における相続の在り方

長寿社会は「お金に働いて貰わなければ成り立たない社会」でもある。
2012年4月号・ 11月号参照)

この視点を入れて長寿社会の相続制度の在り方を考えるときは、長寿社会を全うする自分のための財産の相続と、次世代へ引き継いで、社会のために活かしていく財産の相続とに分けて考えると考えやすいのではなかろうか。

自分の老後のための財産は自分をもっともよく面倒を見てくれる、見てくれた人へ、家族を含め自分たちの生活を支える財産は、財産を活かしてくれる人へタイミングよく委ねたいものである。

相続と相続財産について『長寿社会を全うするため』という観点から「遺言と遺留分について」、『相続財産を活性化させる』という観点から「孫への財産の移転について」 考えてみたい。

長寿社会の遺留分制度

遺留分制度は長寿社会の課題でもある高齢者の介護問題ともリンクしている。「老々相続」においては老後をよく見てくれた者に遺産を多く与えられるようにすべきである。

この障害になっているのが遺留分制度である。一生懸命介護しても報われない相続権のないお嫁さんや、養子縁組しても形だけのお嫁さんがあまりにも多すぎる。

一方、親の介護をほったらかしにしていても相続が始まれば遺留分制度によって堂々と相続財産を要求する相続人も多い。

長寿社会、高齢化社会においては介護や生活を支えた人や、お世話になった人々に優先的に財産の遺贈ができるようにするためには現行の遺留分制度を廃止するか、若年者に制限するように変更することが望ましいと思う。

こうすることが社会保障の原点である「自助」を促進する基盤である「家族と財産」というインフラを整えることにもなる。

相続税加算の在り方

「孫への財産の移転」は現行制度では、『世代飛び越え相続』として、相続人の場合の相続税に 20% 上乗せし、相続税が重くなるようにしている。

贈与ともなれば懲罰的ともいえる贈与税が課税される。「老々相続」の時代においては、相続財産を有効に活用できるのは現役で活躍している孫の世代である。

相続税の加算制度を廃止し異常な養子縁組をしなくとも孫に遺贈や相続時精算課税制度による生前贈与により移転しやすくする。

さらに孫への移転を促進するために、相続財産活性化促進税額控除を設けて移転を進めることが、活力ある長寿社会実現への早道で、閉塞感が強いデフレ脱却への一助にもなるのではないかと考える。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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