「税と社会保障の一体改革について」

税と社会保障の一体改革

税と社会保障の一体改革について議論が行われてきたが、消費税を充てることで結論が出たようである。しかし、国民の側からみていると、よく分からないというのが偽らざる気持ちである。

なぜなのか、高齢者に対する年金、医療、介護に関する社会保障制度は 40~50年にわたって安定的に運用しなければならない制度であるにもかかわらず、目先の議論に集中して、制度のあるべき姿が見えてこないのである。

本来あるべき姿と現状とのギャップが明確になって初めてそのギャップをどう埋めるかという議論でなければおかしいと思うのは私だけではあるまい。

あるべき姿とは

あるべき姿とは、社会保障は「自助、共助、公助」 を原則とすることを国民的合意を受けてはっきりと打ち出すことである。原則の第一歩は年老いて働けなくなったときの生存コストは自分の余剰でなければならない。自助の原則を確立することである。

そうすれば年金・社会保障制度は理論的に構築できる。将来の生存コストは、現在の国民の社会保養費用(年金・医療・介護)を年齢別に計算し、年齢別の人口で除し、一人当たり一年毎の計算をし、標準リタイア年齢から合計すれば生存コストの計算ができる。

少なくとも現在の自分の将来を推計することができるのである。この枠組みがしっかりできれば、不幸にして怪我や病気で就労できなかったとき、幸いにして健康で高齢になっても働けるとき、マクロ計算とミクロの現実のギャップの調整などを共助、公助の形で行うことが構築できる。

年金は 40~50 年の枠組みが必要

昭和 25(1961)年に国民年金制度ができて、満額受給ができるようになったのは平成 13 (2001)年である。

少なくとも年金制度は当初でも 40年、 65 歳受給開始の現在は 45 年、現在議論されている 70 歳となれば50 年になる。

私の平均余命の推移であるが、長寿社会が実現した現在では自動調整機能を組み込まなければならない。5年ごとに行われる国勢調査などに合わせて、最大最長でも5年ごとに自動調整できる仕組みにし、政争の道具にされないようにすべきである。

平成 20 年7月号では「社会保障システムは人の一生に影響を及ぼすものであり、理論的枠組みのもとに確固とした、しかも、状況の変化に耐えるしなやかな社会保障システムを組み立ててほしい」と書いた。

40年、50年と超長期にわたる制度であるかぎり、辻褄合わせでは制度はもたないのである。「税と社会保障の一体改革」は自助を前提とせず、現行の社会保障制度ありきで不足財源の穴埋めを「税」頼みの議論に終始して、混乱を増幅するだけで賛成できない。

ギリシャの混乱を他山の石にして

ギリシャでは国家公務員は4人に1人とも言われ、いま財政が破綻して国債の償還が危ぶまれ、EU各国の支援が始まり、財政再建策として公務員の人員整理や年金のカットが俎上に載り、大混乱が起きている。

日本の財政の状態はギリシャより悪く、日本もいつ「Xデー」が来てもおかしくないといわれている。日本国民がギリシャやイタリアの国民のような混乱にならないように、社会保障に関する自助の原則を確立し、それに伴う給付減額の痛みを伴う改革であっても国民に提示すべきである。

公助を税に求めるとしても消費税ではなく「社会保障は経済的ゆとりの中で」という原則に立ち返って所得に連動する税の中で考慮すべきものである。併せて歳出削減として真っ先に検討されるべきは国家公務員制度や公務員の天下りシステムで、これを改めた上で増税の議論をして欲しい。

改めて繰り返すが、社会保障は「働きとその中から生まれる余剰」を財源にすべきものと考える。蛇足ながら消費税は安定財源として国防・外交・治安など国家の基本政策に充てるべきと考える。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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