経営者(リーダー)の大局観

私の趣味

私の趣味は囲碁である。昔囲碁を覚えはじめの頃、プロの囲碁の先生に聞いたことがある。

「私たちアマチュアがいくつ置いても勝つことが難しいがなぜでしょう」と。もちろん、修行に掛けた時間、才能など及ぶべくもないことは承知しているが、先生の回答は次のようであった。「あなたが、私(プロの先生のこと)が勝つように、勝つように打っているからですよ」。

自分では良かれと思い、考えて打っていてもプロの棋士から見れば、アマチュアの私の打つ手が「一手パス」の手であったり、「相手を利するだけのマイナスの手」 であったり、大小の価値判断を誤った「小さな手」であったり、手順と形の「急所を外した手」であったり、結果として幾つ石を置いても勝てないのである。

囲碁の教え

私も経営者の一人として多種多様な経営上の意思決定をしているが、私はこの先生の言葉を胸において、自分の意思決定が「一手パス」になっていないか、あるいは「マイナスの手」すなわち、自分の意思決定が相手の反撃を誘発していないか、ブーメランのように自分に跳ね返ってこないか、大局やタイミングを逸した「部分に拘った手」になっていないかなど絶えず自問自答しながら行っている。

時には間違った判断や意思決定をして「汗顔の至り」「内心忸怩たるものあり」というものも少なくはないが、意思決定権を持つものは絶えず自省し、権限の行使には十分留意して意思決定を行わなければならないと、いつも自戒を込めて「力を持つものは力をためて導く」ことができるようになりたいと考えている。

正しい意思決定をす るために

プロとアマチュアの違いは大局観(布石) 50 %、手順・手筋の応酬 40 %、ヨセ 10 %と個人的には感じている。プロだアマチュアといっても囲碁は所詮趣味の世界であるが、経営者や政治家など常に現実に即した意思決定をしていく者にとっても大筋違わないのではないかと思う。

「不易流行」という言葉があるが、経営者やリーダーが正しい意思決定をするためには、「不易」変えてはならないものを見極めて腹の底に収め、「流行」絶えず変えていかなければならないものを見極め、絶えず自己革新に勤めなければならない。

リーダーの役割

菅首相は「3・ 11 東日本大震災」に立ちすくみ、怯えてしまって「浜岡原発停止」の意思決定をしてしまった。囲碁でいえば大石が取られそうになって、パニックになっている姿が目に浮かぶ。たとえ大石がとられることになっても、取られる石を利用して大局を有利に展開することを考えなくてはならない。

日本は科学立国日本、技術大国日本、ものづく り大国日本として自他共に認めてきた。この日本の総力を挙げて浜岡原発を守る。日本の原発を守る。そして今回の原発事故を教訓として原子力発電の制御技術や、除染技術、高放射能下で活動できるロボット技術などの事故対応策を研究開発し、原子力を安全な核エネルギーにするための世界のセンターとなる旨の宣言をしてほしかった。

そして、日本の復興のために、また、原子力発電の世界のセンターにするべく世界中から日本へ技術の提供と投資を呼びかけてほしかったのである。

ピンチに立ちすくみ怯えてしまって、ピンチをチャンスに代え世界に日本をアピールする絶好のチャンスを逃してしまった。菅首相にはチャーチルが第二次世界大戦にあたって国民に呼びかけて勝利したように、国民の総力を挙げて国難に立ち向かい克服していく姿を国民に示して欲しかったと思うのは私だけではあるまいと思う。

税理士法人LRパートナーズ 代表社員 小川 湧三

 


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